異世界オークはうまかった。ブタっぽい俺の異世界丸焼きサバイバル

鳴門蒼空

第一話 ブタっぽい俺の糖尿病の宣告と俺の日常

「検査結果から言いますと、間違いなく糖尿病ですね」


「糖尿病ですか?」


「はい。きちんと食事療法と運動療法。それに、薬を定期的に摂取しないと危ないですね」


「まじですか?」


「はい。私としましては、手遅れになる前に、適切な食事療法をしつつ、体重を落とすことをお勧めします」


「やっぱり……運動ですか?」


「ええ、あと食事制限をした方がいいですね。それと、血糖値を下げるお薬ですね」


「そうですか。で、食事はどの程度まで食べてもいいんですか?」


 そう、俺にとって、何よりもいやなのは食事制限だ。


 今の今まで食事制限なんてしたことがない。


 ただ食いたいものを食って、日々を生きていただけだからだ。


「そうですね。簡単でいいんで、今朝どのような食事をされてきましたか?」


「そうですね」


 俺は言われるがままに、今朝食べたご飯を少しづつ頭の中で思い出しながらお医者さんに語っていった。


「まず、朝はフランクフルトに、フライパンオムライスに、スーパーカップに、飲料水が一本ぐらいですかね?」


 俺は思い出せる限りの朝食メニューを告げた。


「う~ん。そうですか。ソーセージに、オムライスにスーパーカップに、飲料水ですか? う~ん」


「どうかされたんですか?」


 お医者さんが悩んでいるようなので、俺は問いかけた。


「いえ、なんでもありません。ちなみに昨晩は何を召し上がりましたか?」


 俺はお医者さんに言われるがままに、少しづつ思い出しながら回答する。


「そうですね。たしか……たらこスパゲッティを少しと、カレーぐらいでしたね」


「そうですか。う~ん」


「どうかしましたか?」


「いえね。太田太志さんのおっしゃる分量では、ここまで脂肪がつかないと思うのですが、本当にこれだけですか?」


「ええ、昨晩は、たらこスパゲッティを、六束と、鍋カレーを食べました」


「………………」


「………………」


「鍋カレーですか」


「はい」


「では、今朝は?」


「フランクフルト六本に、フライパンオムライスに、スーパーカップを五個に、飲料水が一本です」


「ちなみにオムライスの量は、どのくらいですか?」


「え~とたしか、卵が二パックと鶏ももがなかったので、豚ブロックと牛ブロックの肉を1キロづつと、コメが十合ですかね」


「………………」


「………………」


「ちなみに飲料水は何の銘柄を?」


「もちろん、特大コーラです」


「特大って、あの新発売の?」


「はい! よく知ってますね♪ 俺新発売した時から毎日三本飲んでるんですよ!」


 俺は俺の話すことをバカにせず真面目に聞いてくれるお医者さんの言葉が嬉しくて、お医者さんの質問に正直に答えていた。


「えっと、ちなみに、毎日。できればここ一週間ほどのお食事メニューなどをよければ聞かせてください」


「はい。まずですね。」


 俺が言おうとするとお医者さんが言ってくる。


「ああ、あと間食。つまりお食事以外の飲料水と、おやつを含めた食べ物の食べた量も教えてください」


「はいわかりました」


 俺は思い出せるだけ思い出してお医者さんに嬉々として教え始める。


 それから俺は、お医者さんに月曜は朝に五キロのから揚げの塊を食べた後に、夕飯の残りの肉じゃがをすべてご飯にのっけてたいらげたことを伝えて、昼にはマックにいって、新メニューのビッグビッグメガバーガーという三百グラムのパテを、五枚挟んだ五千カロリーオーバーメニューを三個食べたことを伝える。


 そしてその日はそれから、三時のおやつにスーパーカップ二リットルを二個平らげたのち、ペペロンチーノ三束を食安めに食べて、三時のおやつと夜ご飯の間にもポテチ10袋を食って、夜飯にメン五玉入りの二キロの焼き豚を乗せたラーメンを食ったあとで小腹がすいたので、夜食におにぎりを五個食べて、寝た後に夜中に目が覚めたために、ポッキーを五箱食べたことを語った。


 もちろん。全ての食事のお供は、特大コーラであることを告げる。


 俺にとってコーラとは一般人の水と同じ飲み物であり、切っても切り馳せない間柄であったからだ。


 俺はそんな感じで、お医者さんに一週間のメニューを語っていった。


「……………………」


「……………………」


 俺が話し終えて数十秒の沈黙の後、お医者さんが口を開いて言った。


「入院」


「どうしてですか!?」


 俺はお医者さんの判断に納得できずに大声を張り上げる。


「いいですか太田さん。あなたの食生活は異常です。今すぐに食生活を改善しないと、大変なことになります」


「でも、今までは健康でした」


「ええ、それはわかっていますが、今回検査をして太田さんの異常な血糖値などを見させていただいた結論としまして、医者の立場から言わせてもらえれば、太田さん。あなた、このままだと取り返しがつかなくなりますよ?」


「大丈夫です。今まで大丈夫だったんですから」


「………………」


「………………」


 それから俺はお医者さんとしばしの間無言のにらみ合いを続けていたのだが、長時間にわたるお医者さんの説得を受けて、い~加減に腹が減ってきて我慢できなくなった俺は、入院して強制的な食事制限をすることをしないという条件を付ける代わりに、お医者さんの助言に従って、渋々ながら翌日からダイエットを開始することにした。


 で、肝心の俺のダイエット方法についてだが、お医者さんは俺が普段自転車に乗っていることを知ると、俺みたいな体格。主に体重百キロを軽く越えるような人が、いきなり長距離を走ったり歩いたりすると、心筋梗塞などを起こしかねないので、まず最初に軽い自転車運動をすることを進められた。


 世に言う自転車ダイエットという奴だ。


 そのため俺は、明日から始めるダイエットのために、俺がよく行く近所のスーパーに食料の買い出しに来ていた。


 なんでダイエットを始めるのに食料の買い出しが必要なのかだって? そんなもん決まってる。


 ダイエット中に腹が減ったら困るからだ。


 俺はダイエットはするが、腹が減るのは耐えられないんだ。


 だから、ダイエットの途中で食う食料は、常時携帯しようと思っている。そのための買い出しだ。


 まずスーパーに来た俺は、店のカート二個を手に取ると四個のかごを積む。で、いつものように飲料類コーナーを目指す。


 飲料水コーナー(ジュース売り場)へとたどり着いた俺は、上のかごと下のかごの底に寝かせるようにして、いつも飲んでいる飲料水(特大コーラ)を三本づつ四つのかごに合計一二本三六リットルを寝かせると、お肉売り場へと直行した。


 理由は簡単だ。


 明日のダイエットのための体力をつけるために、今夜焼き肉を食べるためだ。

 俺は少量の肉しか入っていないパック肉には目もくれずに、お肉の量り売りコーナーへと向かう。


 量り売りコーナーへとついた俺は、お肉コーナーにふさわしい体格をした恰幅のいいおばちゃんに迷わず声をかける。


「おばちゃん。牛の味付け肉と、豚バラのみそ漬けを五キロづつちょうだい」


「はいよ」


 俺がいつもほぼ毎日注文しているために、勝手知ったるなんとやらといった感じで、おばちゃんは店の奥に引っ込むと、パッパッと俺の注文したお肉をショーケースではなく店の奥から取り出してくる。


 理由は簡単だ。


 俺がお肉をキロ単位で注文すると、すぐにショーケースに入れてあるお肉が、なくなってしまうからだ。


 で、おばちゃんからお肉を受け取った俺は、今度は惣菜コーナーへと足を向ける。


 もちろん明日のげん担ぎのために、カツを買うためだ。


 お惣菜コーナーの揚げ物コーナーに到着した俺は、プラスチックのタッパーみたいな容器(特大)を手にすると、迷わずトンカツヒレカツ牛カツチキンカツを押しつぶすように入れる。


 もちろん全部三枚づつだ。そのため特大容器は四パック使った。


 で、最後に俺はメインであるお菓子コーナーへと進んだ。


 俺がお菓子コーナーへ行くと、学校帰りの子供たちが群がっていた。


 そして、俺がお菓子を手に入れるために近づくと、皆口々にこう口にした。


「オークだっオークがきたぞっみんな逃げろっ喰われちまうぞ!」


 で、一人がそう叫べばほかの子供たちも便乗して、


「いやー豚に食べられちゃうぅ!!」


「巨大オークがまた来やがった!」


「豚に近づくなっエサにされるぞ!」


 てな感じに、ちょっとしたいじめが始まる。


 まぁ心の広い俺はいつものように気にしない。


 で、お菓子売り場の目当てのお菓子へと手を伸ばした。


 もちろん俺の狙いは、油ギッシュな代表格であるポテチたちだ。


 俺は棚にあるポテチ。塩、バター醤油、コンソメ、のり塩などを三袋づつかごに放り込んだのち、チョコレートや飴玉やポッキーなどを、次々にかごに山積みにする。


 俺はかごに山積みにしたお菓子の上から、さらに次々と、これでもかとお菓子を乗せたのちレジへと向かった。


 そうして行きつけのスーパーでの買い物を終えて、大量の買い物袋を手にした俺は、自宅につくとホットプレートを二機用意して、火力を最大に上げる。


 それからあらかじめ炊いておいた炊飯器二台分のコメをどんぶり否、土鍋に特盛に乗せると、買ってきたトンカツヒレカツ牛カツチキンカツを、土鍋ご飯の上にのせて特濃こってりカツソースをかけて、特製四種の肉カツ丼を作りながら、焼き肉用の肉を次々とホットプレートで焼き、カツと一緒に仲良くご飯の上に乗せてお手製のアブラギッシュなカツ肉どんぶりを作り、瞬く間に腹に収めていった。


 夕食を食い腹が朽ちて眠くなった俺は、その場で大の字になって寝ることにした。


 これが俺、お医者さんから糖尿病宣告を受けた太田太志の日常だった。

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