冬のお話。
朝凪湊
言いたかったの。
マフラーの柔軟剤の香りを吸い込んで、いつもどおりだと安堵する。スカートから出てる脚が冷たくなっているとわかる。だけど鼻の頭はじりっと熱かった。
今日が終わったら、もう会えないのかな。
ポケットの中に突っ込んだ手を握りしめる。思い返すのは後ろ姿で。
ーーーーー
雪が降って欲しいと思う。よくわからないが、雪は音を吸い込んでくれると聞いたのだ。
もし、あの時に雪が降ってたらよかったのに。「ばいばい」じゃなくて。
「好きだ」って言いたかった。
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