39

『今どこにいるかはわかりますか?』

 とにもかくにも流谷さんの居場所がわからなければ話にならない。返事はすぐに届いた。

『戸口沢駅で降りました。志保がいるっていう場所に着いたらそこの地図を送ります』

 急いで戸口沢駅までの乗り換えルートを調べる。ここからだと電車で二十分以上かかる距離だ。

(タクシーで戸口沢駅まで向かったとして、それでも間に合うか……?)

 駅前でタクシーを拾って乗り込んでしまうと、後は流谷さんからのメッセージを待つことしかできない。なんの意味もないとわかっていながら、それでも携帯を強く握りしめてしまう。

 ――流谷さんからメッセージと現在地の地図が送られてきた。

『ぼろぼろのビルです。お願いです早く来てください』

 タクシーが戸口沢駅に着く。タクシーの中で確認しておいた流谷さんの現在地までの経路をひたすら走る。目的地に近づくにつれ経路はわかり辛くなっていき、何度か間違えそうになったものの、それでも目的地らしきビルに辿り着いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る