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「アンタもいい加減わかったでしょう? トカゲと関わって生きてられるのは運のいい人間だけだってこと。アタシだって例外じゃないわ。もちろんトカゲに対して何もできない人間よりはマシだけど、それでも手も足も出ない相手はいる。それにアンタの場合生まれつきトカゲに絡まれやすいでしょ? 普通に生きてるだけでいつ殺されるかわからないんだから、自分で更に危険を増やすような真似はやめときなさい」

「……嫌です」

「一応、理由を聞いてあげる」

「……その子が、僕よりも辛い状況に置かれているからです。僕も子供の頃からずっと、あの喪服の女につきまとわれ続けたけど、あの女に直接干渉されたのも、危害を加えられそうになったのも、結局一度だけでした。でも、あの子は違う。正体のわからないものに結婚しろと脅されて、圧倒的な力を見せつけられて、その上誰にも助けを求められずに、ずっと一人で恐怖に耐え続けるしかなかった。そんな毎日を、あの子は今も続けているんです」

「その同情で、何ができるの? 十中八九、いえ、九割九分、死体が一つ増えるだけよ」

「――僕は、佐治さんの言ってくれたことに賭けます」

 僕の言葉を聞いて、佐治さんは文字通り目を丸くした。

「……アンタね、あれは根拠も何もない、ただの思いつきで言ったことよ? そんなのに命賭けるとか正気?」

「それ以外に、何も方法がないのなら」

 僕の気のせいでなければ、佐治さんは一瞬何かを悲しんだように見えた。だが、それはほんの一瞬で、

「あっそ、もう好きになさい」

 普段通りの何かを諦めているような顔でそう言うと、僕の前から立ち去った。

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