総合力世界―物理(物理)
並行双月
僕、生物学上は人間です。
『米軍の戦略級広範囲魔術により外来大陸の魔物を一掃することに成功しました。続きまして、中国軍と自衛隊の混成部隊は外来大陸の内部調査へ向かう模様です。』
液晶テレビからノイズの混じったありえないニュースに僕は興奮を隠せないでいた。
「うほぉっ、すげー!魔法すげー!」
もう夢かどうかを疑う過程はとうに過ぎている。
今から勉強しようと手に取ったばかりのシャーペンが無意識のうちに廃棄物と化した。
「僕だってあれぐらいはできそうだけどな、物理で大陸ごと。」
総5000人からなる米軍の最先鋭魔法士の連携攻撃に対して僕からはなんとも的外れな感想が漏れ出す。
― 80那由他。
僕に与えられた力はどうもここの世界では大きすぎるような気がした。
曰く、一ヶ月前、天の声によって全人類は魔法を習得した。
曰く、半ヶ月前、天の声によって全人類はレベルを得た。
曰く、1週間前、天の声によって全生物に総合力が与えられた。
そして、5日前に北朝鮮のすぐ近くに馬鹿げた大きさをした浮遊大陸が出現し、その近くの日本と中国及びインドに多大な被害を与え、朝鮮半島をまるごと押しつぶしたという。
曰く、外来大陸と名付けられたその大陸からは醜悪な怪物が湧き出て人々を襲うという。
そしてさっきのニュースによると米軍により怪物―もとい魔物の掃討が終わり、中国軍と自衛隊の混成部隊が調査に向かっているという。
「やっぱり魔法が使いたいな〜。派手だし、かっこいいし。はぁ〜なんで俺だけ魔法が使えないんだ??」
曰く、この男は天の声に人でなしと判断されたという。
《緊急警報、緊急警報、現在日本大陸にて緊急警報発令中。各地方の地下より魔物の出現を探知。市民の皆さんは近くの避難所に集まり、迎撃の用意を速やかに始めてください》
「またか、」
本日2回目である。
近隣の方々が近くの高校に小走りで向かっているのを視線で追いつつ、僕は溜息を零さずにいられなかった。
「魔法使えないのに行ったところでなぁ、
魔物倒したところで俺だけレベル制じゃないし、意味ねぇぇぇ」
そう、僕、レベルすらないのである。
「まぁ、駆除のお手伝いはしておくか。」
僕は優しいからね。と心でそう付け加えて
「ふっん」
2階のベランダからの飛び降り攻撃に
"名状しがたい本棚のような魔物"
にクリティカルヒットが入る。
僕はこいつのことを筋肉ボックスと呼んでいる。
勢い余って道路に落窪を作ってしまった。
これは筋肉ボックスがやったことにしよう。
なぜなら僕にドジっ子属性はないからな。
HAHAHAHA
とまぁ僕の総合力の前にいかなる魔物もゴミ同然、ほれ!見ろ!まるで魔物がゴミのようだ!フハハハハハハ!!!
ただでさえ寂れてきた街に更なる凍えた風が流れ出す。
――――――――――――
.....
「ん?」
ひとまず周囲の魔物全員にワンパンを食らわせたあと、近所の大きな公園についた僕はありえないものを見た。
金属質な肌に尖った角、人の形をしながらも鼻はなく、楕円形の取って付けたような大きな目に形ばかりの開くことのない口。
「ウルトラマソじゃん!」
僕の声に反応してか、ウルトラマソもどきと目が合ってしまう。
シュワッチ!!との効果音がなりそうなぐらいに目が光ったかと思ったらいきなりこちらに突進してきた。
「危ない!」
女の人の声がするや否や、ウルトラマソは空気の壁にぶつかったかのようによろけて後ずさると、あさっての方向を向いて再び目を光らせて僕と距離をとった。
そのすぐ直後にシマシマパンツの女の子が空から降ってくる。
超 展 開
これがスカートで降ってきたのなら天然で済ませるんだけど、なんと彼女は上半身カッターシャツで下半身パンツ一丁というなんとも扇情的な装いをしていた。
「痴女か。」
「ち、違うわよ!!」
おっと即答だった。
とはいえ見た目と返答のギャップがすごい。
清純な見た目からのお嬢様発言。
わ る く な い
「こんなところで何してるの?」
「こっちのセリフよ!!」
またもや即答された。
もしかしたらこの子は脊髄で物事を考えているのかもしれない。
「避難警報が出ているはずよ。なぜまだ避難していな((y」
言い終わるよりも早くウルトラマソがこっちに突進してきたため、慌てて押し倒した。
他意はない。
頬を紅潮させながらも状況を理解してか彼女からの反応はない。
にしても柔らかいな。などと考える暇もなく
――
ベチャ
軽くぼくに叩かれたウルトラマソは肉ジャムと化した。
「.....えっ」
「うは、きもちわりぃ」
シマシマがフリーズしてしまったようだ。
もちろんハグは継続中だけど。
「そろそろ離してくれない?」
「やだね」
脊髄で返事してしまった。
「警察呼ぶわよ。」
僕に迷いが生じた。こう見えても僕は正義感溢れる高校生なので経歴に汚点はつけたくない。
仕方なく離してあげた。
柔らかい感覚が恋しい。
「あなた一体何者なの?」
「私の総合力は80那由他です。」
「え?ナユタ?ナユタってなに?」
僕はこの子の学のなさを恥じた。
僕が呆れていると、
「危ない!!」
本日2度目の危ないいただきました。
今度は筋肉ボックスか、全くお前らも飽きないな。
推測800kgのパンチが僕の頭に直撃する。
シマシマから声にならない悲鳴が漏れるが気にしない。
「この程度、痛くも痒くもねぇな。」
デコピンでまたもや筋肉ボックスをただの肉に還した。食えないが。
「.....あなた、人間?」
なんて失礼な小娘だ。見たところ僕と同じぐらいの年齢だけど、まるで礼儀がなっていないじゃないか。どう見ても僕は人間だろうに
「生物学上は人だけど?」
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