第3話 トラブルは突然に その2
どんっ!
私は、教室から出た刹那、廊下を歩いてきた男子と思い切りぶつかってしまった。
「わわっ!」
「きゃっ!」
ぶつかった反動でその男子は、両手に抱えていた大きな本を床にどさっと落とした。
バサバサバサッ。
私達は同時に悲鳴を上げた。
「あっ! ああっ!」
A4ほどの大きさ、辞書並みにぶ厚いがっしりとしたその本は、落ちた衝撃で本が開き、中のページが10数枚外れ、バラバラと飛び出した。飛び出したページが数枚廊下に滑り落ちる。
えっ!? な、なに!? 私、まさかこの本壊してしまったの!?
思わず顔からさーっと血の気が引く。
「ご、ごめん!!」
とにかく散らばったページを集めなきゃ。
私は慌ててその場にしゃがみこんでページを拾い、同じくかがんで拾い集めていた男子生徒に手渡そうと彼を見た。
見て、拍子抜けした。
なーんだ。
「な、なんだ。巧じゃない」
慌てていたから、ちっとも気付かなかった。
「今頃気付いたか、真琴」
細長い眼鏡の奥から切れ長の瞳が小ばかにしたように私を見つめている。
さらさらと少し長めの黒い前髪が揺れた。
須藤巧。秀才で次期生徒会長候補、隣のクラスにいる私の幼馴染でもあ る。すらりと背が高く、割と整った顔立ちと一見クールな雰囲気から、女子の中にはファンもいて騒いでいるとかなんとか。真実を知らない事って幸せだ、ほんと。
朝っぱらから嫌な奴に会っちゃった。誤って損した。
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