ただ一つの能力を

ツヨシ

第1話

三年付き合って、結婚の約束までした女を、ふった。


「いったい、なんだって言うのよ!」


と女は叫ぶ。


理由は単純だ。


もっといい女といい仲になったからだ。


男だったら乗り換えるのは当たり前だろう。


「プロポーズしてくれたじゃないの!」


確かにしたが、それは夜のベッドの上での口約束だ。


「そんなことを言った覚えはないなあ」


女が掴みかかってきたが、逆に殴り返し、倒れたところを何度も蹴り上げた。


何回蹴ったのかわからなくなった頃、もがき、苦しみ、叫んでいた女が静かになった。


女をそのままにして立ち去ろうとした時、女が言った。


「呪ってやる」


小さくか細い声だったが、そう聞こえた。


俺は思わず笑ってしまった。


俺はもともと呪いとかそういう類のものを、信じていないのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る