「釣れますか?」

ツヨシ

第1話

夜釣りに出かけた。


橋のたもとで、この辺りはよく釣れるのだ。


釣りを始めて一時間くらい経った頃だろうか。


いきなり声をかけられた。


「釣れますか?」


見ると若く、背の高い男がいた。


いかつい顔だが、髪は女のように長い。


「ええ、そこそこですね」


俺がそう言うと男はそのまま歩き出し、橋を渡って行った。


橋には街灯があり、その男の姿がよく見えた。


それなりの橋を徒歩で渡りきるには少し時間がかかるが、その男がなんだか気になった俺は、それをずっと見ていた。


やがて男は橋を渡りきり、その先に進むと男の姿は見えなくなった。


俺は視線を水面に戻した。


するとまた、声をかけられた。


「釣れますか?」


そこにはさっき橋を渡ったばかりの男がいた。


正直心底驚いたが、努めて平静を装い、言った。


「まあまあですね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る