オカルト冬の時代
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オカルトとプロレス、共通点と歴史
”オカルト冬の時代”なんて格好つけたタイトルだがこれにはちゃんとした意味がある。冬の時代というのは衰退期、または、冬眠から春を今か今かと待ちわびている言わば厳冬期のような状態をだろうと個人的に思っている。
唐突な話、私はプロレスが好きだ。
オカルトとプロレスはすごく似ているため少々思い出がてらに語らせてほしい。
私が初めてプロレスに触れたのは2005年のWWEである。(WWEは海外の大規模なプロレス会社)友達の家でJ-Sportsの録画を見て子供ながらにあれはすごく衝撃を受けた。私は新生児期から大病を患っており親からは”激しい運動はダメ”とお叱りを受けてもなお学校でプロレスごっこをしたりと本気でプロレスラーを夢見ていたほどの衝撃だ。
私が生まれる前(94年)以前はプロレスの大ブームだった。
新日本に全日本、猪木に馬場、長州、前田、藤波、木村、武藤、橋本、蝶野。この時代のプロレスが好きな人はこの苗字を見ただけで顔、それに技名や名試合なんかも想起されるが、これだけ羅列してもさっぱりな人もいるだろう。
98年4.4のドンフライ戦、猪木という英雄の幕引き試合は東京ドームを埋めるぐらい人々は熱狂的だった。
だが盛者必衰、プロレスファンの間では一般的に言われている”プロレス冬の時代”が到来するのである。いよいよプロレスというエンターテインメント(スポーツではない)が面白くなくなってきたのだ。
メガネスーパーという大企業の社長がプロレス好きが高じてSWSという団体を作り、金に物を言わせて選手を引き抜いた結果プロレス内外はボロボロとなった。
つまりは娯楽から商売に変化しドラマ性が無くなったのだ。ゲームで例えるとこれまで引き継がれた物語性を捨ててキャラゲーにしたような感覚だ。画してSWSはたった一年ほどだったが、選手の引退や離散が相次ぎ売れ行きにも雲がかかり2000年以降の”冬の時代”が到来したのだ。オカダという選手が現れるまで。
散々語って満足したところで、オカルトに少し話を戻す。
今現在オカルトは”冬の時代”なのだ。先ほどにも言ったがオカルトも盛者必衰にして辿ってきた歴史や足跡がプロレスと似ているのだ。
プロレスブームの火付け役が力道山ならオカルトブームの火付け役はノストラダムスの大予言だろう。
当時の背景(70~80年代)はバブル到来だ、世の中は物質主義に変わろうする中、人間の心は金で買うことはできない。物で満たされても心の中にはポカンと穴が開いていたのだろう。
一部の人間は精神世界に没入していった。日本でもキリスト教信者が増えたり、企業が多くの超巨大大仏を建立したりと金で功徳を積もうとする者もいた。(世界で三番目にデカい大仏、牛久大仏もこの時期)オウムが急成長していったのもそういった環境が一因ともいえるだろう。
振り切った成長の迎えた先には何が待っている?……衰退しかないのだ。
この後は苦しみに耐えるしかないのだ。苦しんだ先に待っているものは何もない、だとすると苦しむ前に自分から命を絶とうとするだろう。そういった破滅的思考が終末論を生み日本全土を覆い尽くしてしまったのだ。
オカルトブームはたくさんの都市伝説妖怪を生み出していった。口裂け女、こっくりさん、人面犬と挙げればキリがない。終末論という曖昧で巨大な闇から身近なものへ、人々の恐怖がマクロからミクロに変化していったのだ。
そこからというものメディアや新聞、漫画などほとんどの娯楽の題材がオカルトへと変貌していったのだ。こうして日本中は人々の口から飛び交う噂話であふれたのだった。
そしてノストラダムスの予言の期日(99年7月)が過ぎてから5年も経たないうちにブームは去っていった。皆が噂していた都市伝説と呼ばれるような噂たちは一斉に人から人へと語られることはなくなり消滅していったのだ。
それは単に皆がオカルトブームに飽きたわけではなく偽物が氾濫したからだ。どれが本物でどれが偽物かはさておき「なんだこれは!」という未知との遭遇よりも衝撃度を売りにするような噂や映像が散見されるようになったからだ。
今現在でも心霊を題材にした映画(偽物)の切り抜きを普通のTVで放送したり、少し調べれば映像作品だと公言している心霊作品をあたかも本当の心霊映像のように流すのである。そんなものでは民衆の心は引き付けられない。
それでは何故偽物の心霊作品を作るのか、それは金になるからだ。
TVで取り扱ってもらえればお金になるからだ。かの有名なロズウェルの宇宙人解剖フィルムなんかは最近フェイクだと判明した。テープの売値はかなりの期間食っていけるほどのお金を手にしていたという。
80年代から90年代は皆の心の奥に潜む恐怖心を掻き立てられるキラキラと宝石のように光り輝く謎に包まれた噂話やオカルト映像が多く存在していたのだ。
だがしかし、情報化社会になるに連れ科学は発展し、ネットが普及するとフェイクはいずれバレ、創作映像にも新鮮味が無くなり恐怖心を掻き立てられなくなっていった末、オカルトは”冬”を迎えたのだった。
人々の心を魅了するオカルトとプロレス、どちらも日本中を包み込んだその輝かしい栄華から一変、娯楽から商売、恐怖心から商売、誰もが馬鹿々々しく感じ人々から忘れ去られるまでの衰退の足跡は似ていると感じざるを得ない。
しかしプロレスの冬の時代は越され春を迎えたと私は思う。最近はプ女子なんてものもある。だとすればプロレスと同様何かキッカケがあればまた再燃するだろうと私は考えている。
ちなみに筆者はこれを書いている現在は山口敏太郎氏と大槻ケンヂ氏の「人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた」を読んだことはありませんので、全く個人的な意見です。
※終末論 人間社会と世界そのものの終末についての宗教思想のことである。終末思想とも言う。キリスト教での世界の終わりを示す最後の審判としても扱われる。
都市伝説妖怪 口裂け女や花子さんなどの口伝によって語られる妖怪。現代妖怪ともいう。
プ女子 プロレスファンの女子の事を指す。ミリタリー女子や歴女などサブカルに多く女性が参入した時期に始まり今でも多く存在する。
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