第13話
哲也と鹿島の2人は部屋に入ると、机に2冊の本が置いてあるのを見つけた。
1冊は可愛い装飾が施された日記帳、そしてもう片方は、
「何なんですかね、これ...?」
一見すると黒い表紙の本なのだが、よくよく見るとそれは黒い何かが塗りたくられた表紙に透明なカバーがされていたものであった。
「こいつも気になるが、まずは日記の方から見るか。」
そう言いながら哲也は日記を開いた。
ページを開くと、女性特有の丸っこい文字が躍る。1ページ目から目を通す。
2016年5月12日
先生から、精神安定のために日記をつけるように言われたから、つけるようにする。他には何もない。
2016年5月13日
楽しいことなんて何もない。
2016年5月14日
母がペットを買ってきた。はりねずみなんてどこが可愛いのか。
2016年5月15日
母からはりねずみの世話をする様に言われる。名前は母がくりぼうと名付けた。私を見て、警戒したのかすぐに丸くなる。はっきり言って可愛くない。
2016年5月16日
少し触ったら、威嚇された。痛い。殺したい。
この後似たような内容が続いたので、内容が変化するまでぱらぱらとページを飛ばす。どうやら、最初は敵意を抱いていたものの、はりねずみに段々と愛着が湧いていったようだ。
数十ページほど飛ばすと、ある文字が目に飛び込んできた。
2016年7月19日
くりぼうのおやつためにミルワームを買いにホームセンター行った帰り、ゴミ捨て場にあった変な本を拾う。なんで拾ったんだろう。気持ち悪い。
2016年7月20日
くりぼうのために買ってきたミルワームなのに、何故か可愛くなってきた。昨日拾ってきた本はまだ読んでいない。
「この拾ってきた本がこれって訳か...ん?」
日記の最後の方に、何故かぺたりと張り付いて取れないページがある。
慎重にそのページを剥がすと、殴り書きのような文字で書かれていた。
※年※月※日
私は”神に選ばれ た”んだ。本 を読んで理 かいできた
く りぼうだけじ ゃまん足できな かったみた い
ま だ近く に ”肉”はある
「ふぅ、いかれてやがるな。」
哲也は日記を閉じる。
「テツさん、これって...」
「ああ、イかれた娘がペットと両親を生け贄に、何かの儀式でもしたんだろ。」
哲也は日記を置くと、黒い本の方に手を伸ばす。
「次はこのやばそうな本の方か。」
哲也は本に触れた瞬間、言いようのない悪寒が背筋に上るのを感じた。
「テツさん、どうかしましたか?」
鹿島は哲也がピタリと動きを止めたことに、戸惑う。
「いや...何でもない。」
そう言いながら、黒い本に改めて手を伸ばすのであった。
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