0051から0075
0051
「いらしゃいませー」
「アイスコーヒーひとつ下さい」
「サイズはバケツで宜しいですねー」
「そんなに飲めません」
「ご心配には及びませんー。まずはこの氷の入ったバケツに水を入れますー」
「はぁ」
「外に出てこれを頭から被っていただければ私が動画を撮りますー」
「コーヒーは?」
0052
「ませー」
「ホットコーヒーひとつ下さい」
「サイズはドラム缶で宜しいですねー」
「飲み切る前に冷めますよね」
「加熱用の薪も付属しておりますー」
「もって数時間ですよね」
「それで宜しいかとー」
「いやこれ何年分だよって話でしょ」
「一回分ですー」
「……もしかして……風呂?」
0053
「ませー」
「カフェラテひとつ下さい」
「ただ今牛乳を切らしておりまして豆乳になりますが宜しいですかー?」
「まあいい、かなぁ」
「ただ今コーヒーも切らしておりましてこしあんをお湯で溶いたものになりますが」
「宜しくないよね?」
「大豆と小豆で相性も」
「カフェラテをね?」
0054
「いらっしゃいませー」
「ホットコーヒーひとつ下さい」
「ご一緒にこちらの簡易保険はいかがですかー?」
「はい?」
「こちらの『猫舌アチチ保険』に入っておけば万が一ホットコーヒーが熱かった時も安心ですー」
「どう安心なんですか?」
「ふーふーして差しあげますー」
「……え?」
0055
「ませー」
「アイスコーヒーひとつ下さい」
「蓋を開けさせていただきますー」
「ああはい」
「塩をかけさせていただきますー」
「砂糖にしてね」
「後はこちらの試験管にコーヒーを入れてこの割り箸を差し込んで」
「アイスコーヒーが飲みたいのであってコーヒーアイスが食べたい訳では」
0056
「ませー」
「この串に刺さった唐揚げひとつ下さい」
「サービスでレモン汁をかけさせていただきますねー」
「それはやめて下さい」
「ではコーヒー用のクリームを」
「何もかけないで下さいね」
「ではおでん汁に漬けさせて」
「手を加えないで下さい」
「ではどうぞ」
「袋には入れて……」
0057
「ませー」
「おでんのちくわぶをひとつ下さい」
「中に通すシャフトはどの素材に致しますかー?」
「いりませんよ」
「でもちくわぶギヤとして使うのなら」
「そんな使い方しません」
「という事はちくわぶタイヤの方ですかー」
「そんなタイヤでオフロード走っている車見た事ないでしょ」
0058
「ませー」
「肉まんひとつ下さい」
「こちらの肉まんには玉ねぎや椎茸なども入っておりますが宜しいですかー?」
「はい」
「偶然具材が偏り中身がほぼ玉ねぎという可能性もございますが」
「作ってみた玉ねぎまんが売れないからって肉まんとして売らないでね……って何故什器に戻す?」
0059
「いらっしゃいませー」
「ホットコーヒーひとつ下さい」
「缶とペットボトルとインスタントどれになさいますかー?」
「いやあの機械を使うドリップするやつで」
「あの機械今壊れているんですー」
「えっでも今まさに使っている人が……」
「あの方は缶ですねー」
「何故に機械を通す?」
0060
「ませー」
「アイスコーヒーひとつ下さい」
「カップはこちらのクラッシュアイスグレープフルーツ味で宜しいでしょうかー?」
「氷だけども」
「トロピカルなコーヒーを」
「無味でお願いします」
「むみっ?」
「無味無臭の無味です」
「ではこちらのカップに水を」
「それじゃお冷やです」
0061
「いらっしゃいませー」
「アイスコーヒーひとつ下さい」
「ただ今機械の整備中でございましてー」
「ああ……なら仕方ないですね」
「代わりにコーラ、ジンジャエール、ウーロン茶ならございますがどれに致しますかー?」
「どこぞのドリンクバーですか。というかコーヒーはないんだ」
0062
「ませー」
「ホットコーヒーのSサイズふたつ下さい」
「糸は何メートルくらい必要ですかー?」
「はい?」
「ハサミやキリなどの道具はこちらにございますのでお使い下さいー」
「糸電話が作りたい訳ではありませんよ」
「という事は外も寒いし耳に当ててー」
「防寒具になんぞするか!」
0063
「ませー」
「この葉書に貼る切手が欲しいのですが」
「では1円切手を52枚で」
「52枚も貼れと?」
「では10円切手を5枚と」
「52円切手を1枚でいいですよね」
「ではこちらの官製葉書で」
「書き直さなきゃいけないでしょ」
「そこでこの代筆サービスが」
「それを売りたいのね」
0064
「ませー
「この肉まんの隣にあるの……玉ねぎですよね?
「新発売の玉ねぎまんですー
「へー
「こちらの玉ねぎまんは玉ねぎを模して多層になっておりますー
「という事はこれ皮は
「玉ねぎですー
「となると中身が
「玉ねぎですー
「それは玉ねぎ……
「買って確かめて下さいませー
「嫌ですー
0065
「ませー
「おでんの大根ひとつ下さい
「こちらの小さな聖護院大根で宜
「それは玉ねぎですよね?
「見破られてしまいましたかー
「なんで玉ねぎが丸ごと入っているんですか?
「新発売の玉ねぎですー
「はぁ
「美味しいので騙されたと思って呑み込んで下さいー
「美味しそうに聞こえませんよ
0066
「ませー
「おでんのごぼう巻きと昆布巻きをひとつずつ下さい
「ごぼう巻きは……こちらのごぼう巻きで宜しいですねー
「後ろから何を取り出すのかと思ったらよくもまあそんなもの作りましたね
「頑張りましたー
「昆布巻きは流石に切ってないあの長さのものではって何? そのデカイ鍋?
0067
「いらっしゃいませー
「おでんの餅巾着とじゃがいもをひとつずつ下さい
「こちらの餅巾着の中にはカレールゥも入っておりますが宜しいですかー?
「この店内に充満しているカレーの匂いはこれが原因でしたか
「おかげでじゃがいもがとても美味しく煮えてますー
「既にカレーですよねこれ
0068
「ませー
「おでんのじゃがいもをひとつ下さい
「薄く切って油で揚げたもので宜しいですかー?
「それはポテトチップスですね
「潰してマヨネーズで和えたもので宜しいですかー?
「それはポテトサラダですね
「ではせめてバターを載せておきますねー
「確かに見た目寂しいかもしれないけど
0069
「ませー
「カフェモカひとつ下さい
「使用するのはこちらのもので宜しいですねー
「うーんとってもいいダシが出そうな鰹節ですね
「ではコーヒーと牛乳を温めますのでお客様はこのカンナを使用してこれを削って下さいませー
「せめてカツオではなくてカカオを削らせ……えっ? 駄洒落?
0070
「いらっしゃいませー
「おでんのじゃがいもひとつ下さい
「この表の中から品種をお選びいただけますがどれに致しますかー?
「何この量……
「当店で扱っていますのは30種類くらいですー
「選べと言われても何が何やら
「私にもさっぱりですー
「それは拙いのでは?
「美味しいですよー
0071
「ませー
「おでんのじゃがいもをひとつ下さい
「潰しておでん汁と混ぜて宜しいですねー
「宜しくないでーす
「このおでんマッシュポテト略しておマッシュポテトが女子工兵の間で密かなブームなんですよー
「工兵……?
「じゃがいもと手榴弾でお手軽に作れますからー
「ポテトマッシャー?
0072
「ませー
「おでんのじゃがいもをひとつ下さい
「こちらのじゃがいもで宜しいですねー
「芽が出ていますね
「じゃがいもには可憐な花が咲くんですよー
「でもそれは食べられませんよね
「憐れみですかー?
「いや芽が出てるし皮が緑色だし煮てないし生のじゃがいもにおでん汁かけただけだし
0073
「いらっしゃいませー
「ハッシュドポテトひとつ下さい
「こちらで宜しいですかー?
「薄ーい。まるで成型ポテトチップスですねー
「しっかり油で揚げてありますのでカチカチに仕上がっておりますー
「ますますポテトチップスですねー
「先程まで筒に入っておりましたー
「バラ売りすんなー
0074
「ませー
「おでんのじゃがいもひとつ下さい
「あちらの席にナイフと彫刻刀をご用意しておりますのでお使い下さいませー
「……芋版でも作れと?
「温かい内にお彫り下さいませー
「やけどしません?
「では氷を入れ
「なくていいです
「では調理前の
「ものがあるならおでんのを使わなくても
0075
「ませー
「おでんのじゃがいもひとつ下さい
「こちら粉末のじゃがいもをじゃがいもの形にした成型おじゃがですが宜しいですかー?
「何の為に一度粉微塵にしたの?
「それはですねー。じゃがいもはワシントン条約で取引が禁止
「されていませんよ
「その99%が虫の形を
「していませんよ
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