迷子
成人式の夜に、静まり返った街を歩く。
ショーケースに閉ざされた灰色の夢。その硝子に映る自分の姿は、光の悪戯で、首から上が掻き消されて見えなかった。
永遠に続くシャッター街に閉じ込められたかのような感覚。こんな場所で迷子になったのは母の手を離してしまったたからだろうか。
もう一人の自分を叩き割るため振り上げた拳は、力無くダラリと垂れ下がる。ショーケースの中と外はどちらが幸せな世界だろうと向こうの彼女に問うてみれば、彼女はニヤリと頬を歪めた。
見上げれば、点滅する蛍光灯の回りに小蠅が二、三飛んでいる。マゼンダの唇で慣れない煙草を咥え、深紅の爪で着火する。
酷く苦い紫煙を吐き出すと、ポトリポトリと小蠅が落ちてゆくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます