ダメ姉は、催眠される(その2)
~SIDE:ヒメ~
冗談半分で親友のマコに催眠術をかけてみたらあろう事か見事に大成功。成功し過ぎて催眠解除不能となった。大事になる前にどうにか穏便に解決しようとした私だったけど……一体どこから嗅ぎつけてきたのか、カナー・清野先生・柊木のマコ大好き三人衆に催眠状態のマコを見つけられてしまう。
……つーか、同じ学校にいるカナーと先生はともかく。どうしてここにいるんだ後輩……
「ふぅん……催眠術ねぇ。まさか本当にそんな素敵なものがあるだなんてね」
「……あの、カナー?これはその……違うんだよ。催眠とか冗談だから、そんなもの実在しないから―――」
「今のマコはなんでも言う事聞くんだって?ちょっと試させて貰いましょうか。ねえマコ。良かったらわたしの指……舐めてみてよ」
今のマコをこの飢えた女狼たちの前に晒すのはまずい。そう思いこれは冗談だと必死に告げるも、聞く耳もたないカナーはそう言ってマコの前に指を差しだす。
「…………はい。ん……っ」
「ふぉおおっ!?」
「……あっちゃー」
止める間もなく無防備に、無抵抗にカナーの命令を聞いてしまうマコ。差し出された指を躊躇なく舐め始める。
「ぁむ、んちゅ……れろ……」
「あ、あっ……♡マコ、じょ……上手よ……んっ♡」
「あーっ!い、いいなぁ!いいなぁ叶井先輩!あたしにもやらせてくださいよ!」
「ま、マコさん……なんて舌使いを……」
てろてろと光る小さいマコの舌がカナーの指を舐めまわす。はじめはゆっくりと丁寧に指先から根本まで舌を這わせる。
「じゅるっ……じゅる、じゅるる……っちゅ、れろ……んんッ……」
「や、やだ……すごい……マコの指舐め……♡そ、そこ……ダメ……っ♪」
「「「…………(ごくり)」」」
徐々に動きは大胆に。口の中だけでなく、首も使い上下にじゅぷじゅぷと卑猥な音を立てて指を舐めるマコ。えっちい事を散々妹のコマに仕込まれているのだろう。その仕草は催眠状態だというのに滑らかで、それはとても淫猥で蠱惑的で……
指舐めされているカナーは勿論の事。見ているだけの先生&後輩、果ては私までもドキドキしてしまうくらいの光景だった。うーむ……流石私の料理とエロの師匠。マコってばテクニシャン。
「……って、いかん。思わず見入ってた。はい、そこまでだよマコ。ストーップ」
「…………はい」
我に返ってどうにかマコを止める私。危ない危ない……これ以上はR指定を受けかねないところだったわ。
「ハァ……ハァ……はぁあああ……す、凄かった……マコ、あどけない顔であんなにえっちな事しちゃうなんて…………と、ともかくこれで本当にマコが催眠されてるって事が証明されたわけよね。さて、次はどんな命令をしちゃおうかしら」
「ちょ、ちょっと叶井先輩!叶井先輩は今マコ先輩を堪能したばっかりじゃないですか!次はあたしの番です!あたしもマコ先輩とイチャイチャしたいですー!」
「わ、私も……マコさんと色んな事したいです……させて欲しいです……」
「……待った。ステイ。そこの三人もストーップ」
マコが冗談抜きに催眠状態と分かって、ますます興奮しながらマコに迫る三人。その三人からマコを庇うように私は割って入り込む。
「あら。どういうつもりよおヒメ?」
「邪魔しないでください麻生先輩!」
「折角マコさんとより親密になれるチャンスなんです……どうか……」
「……まあ待て三人とも。冷静になって考えてほしい。普段のマコならいざ知らず。この状態のマコに手を出すのは、流石に色々とヤバイよ」
「ヤバイ?何がヤバイのかしらおヒメ」
「……考えてみてよ。いくらマコに好意を抱いているとはいえ、催眠されて無抵抗のマコを好き勝手するなんて……最低な発想だと思わない?催眠が解けたら……マコに嫌われるかもしれないよ?」
「ッ……!ま、マコ先輩に……」
「マコさんに……嫌われる……!?」
私のそんな指摘に、先生と後輩はハッとした顔を見せる。
「……こんな卑怯な手段を使って手籠めにしたら……多分マコは傷つく。皆の事を嫌いになる」
「そ、それは確かにヤバイですね……」
「マコさんに嫌われたら……私死ぬかもです……」
「……そして、更にヤバイ事がもう一つ。もし催眠されたマコに下手に手を出したら―――」
「「出したら……?」」
「……シスコンでヤンデレなコマに、冗談抜きに殺されかねない」
「「…………」」
無論、それは催眠をかけてしまった私も含めて一族郎党ミナゴロシ。
その事実を述べた途端、流石に命が惜しいと思ったのか先生たちは冷や汗をかきマコに迫るのを止めてくれる。よしよし……これならばなんとかなるかも……
「……だから、ね?三人ともこのマコに手を出すのはやめよう。ね?ね?」
「手を出す?ふふ……おヒメ、貴女何を言っているのかしら?わたし、そんなつもりは一切ないわよ?」
「……え」
と、どうにか皆を説得できたと思った矢先。不敵な笑みを浮かべたカナーは一人そんな事を言い出した。手を出すつもりはない……?
「そこの二人は知らないけど、少なくともわたしはマコを手籠めにしようとか、そんな不埒で不純な事なんて考えていないわおヒメ」
「……真っ先に、マコに色々しようとしてた人がそれ言う?」
「違うわよ。……これはね、マコの催眠状態を解くために必要な事なのよ」
マコの催眠状態を解くために必要な事……?え、どういう事なの?
「テレビでやってたんだけどね。催眠っていっても絶対的なものじゃないらしいの。なんでも言う事を聞くって売り文句の催眠も、結局人間って自己防衛本能が働くから自分の生命に関わったり心から望んでいない事を命じられたら自然と催眠状態も解けて拒否するんだとか」
「……ふむふむ?」
「つまりね、本気で嫌がりそうな事とか……心に衝撃が走るような事を命じたりすれば。催眠も解けるかもしれないって話よ」
「……なる、ほど……?」
要は無茶ぶりを言ってそれをマコが本心から拒否したら元に戻るかもしれないってことだよね。そう言われてみると一理あるかもしれない。どの道催眠をどうにかして解かなきゃいけないわけだし……色々試さない事には始まらないだろう。
「これも全てはマコの為。マコの催眠を解くためなのよ」
「……うーん」
「そんなにマコの事が心配なら、あまりにアウト過ぎる命令だと判断すればおヒメがストップかければいいでしょ?」
「……ん」
それもそうか。まあ、先生とか後輩はともかく……自他共に認めるマコの一番の親友のカナーはマコに本気で危ない事なんてしない……ハズ。…………しないよね?しないと思う……しない事を祈ろう。
「……わかった。なら、本気でヤバそうなら仲裁するからそのつもりで」
「OK、まっかせなさい。―――さて。話もついたところで……マーコ♡早速色々と楽しい事を試しましょうねー♡」
「…………はい」
というわけで、カナーにまんまと乗せられた私。全てはマコを元に戻す為。催眠解除大作戦、オペレーションスタートだ。
◇ ◇ ◇
「―――心に強い衝撃を与えれば催眠が解けるという事ならば、お任せください!あたしに心当たりがあります!」
開口一番名乗りを上げたのは、マコを慕う駄犬系後輩の柊木。
「ではマコ先輩、命令します!この衣装を着てみてください!」
「…………はい」
一体どこから取り出したのか。後輩はマコに一着の衣装を手渡して着替えるように促す。命じられたマコは渡された服を手にそそくさと更衣室へ向かう。
「……柊木。さっきの衣装、何?」
「えへへー。まあ見ててくださいよ麻生先輩!きっとマコ先輩にお似合いの服なので!」
「……マコにお似合いの服…………まさか、えろ衣装じゃあるまいね?」
「一体マコ先輩を何だと思ってんですか麻生先輩は!?」
……だって。実際マコはえろいし。
「全く失礼しちゃいます。いたって健全なお洋服ですよ!とびっきり、マコ先輩にピッタリなお洋服なんです!」
「…………着替えてきた」
「あっ、マコ先輩お帰りなさ―――きゃぁああああああ♡」
そんな問答をしている間に着替え終わったマコが戻ってきた。現れたマコのその姿は、
「マコ先輩!いいえ、マコ王子!ああ、素敵ですっぅううううう!!!」
「「「…………ええっと」」」
童話とかに出てきそうな、如何にもな王子様風の衣装を纏ったものであった。……に、似合う……?
「綺麗!カッコいい!クールです!」
「……柊木」
「絶対に似合うと確信していましたが……想像以上であたし感激です!」
「……おい、おーい柊木」
「ああ、なんてイケメンなんですかマコ王子っ……!もぅ素敵っ!抱いて!」
「……激写してないで聞け柊木」
私の声を完全無視して王子様風衣装のマコをカメラに激写する柊木。おい聞け。
「もー、なんですか麻生先輩!今イイところなんですから邪魔しないでくださいよぉ」
「……趣旨忘れるな。マコの催眠を解くのが目的だったでしょうが。……つーか、これのどこが心に衝撃を与えると?」
「せっかちさんですね麻生先輩は。心に衝撃を与えるのは……ここからが本番ですよ。さあマコ王子、もう一つ命じます。その服を着たまま、わたしを王子様のように―――お姫様抱っこしてくださいっ!」
「…………はい」
命じられた通りに今度は柊木をひょいっと抱きかかえ、お姫様抱っこしてあげるマコ。だから待てや。
「ふぉおおおおお……!ゆ、夢にまで見たお姫様抱っこ……!憧れの人からして貰えるお姫様抱っこ……!」
「……柊木。もう一度聞く。これのどこが心に衝撃を与える行為なのか言ってみろ」
「何を言いますか!こんなに素敵な事をされて、ときめかない乙女なんていないでしょう!?」
「……だから、趣旨が違う」
どうしてマコの心に衝撃を与えるのにお姫様抱っこする必要があるのか。これじゃあ柊木の心に衝撃を与えているだけじゃないか。
「うーん……マコさんにはカッコいい衣装はあまり似合いませんよね。どうしても可愛いが先に立っちゃいます」
「同感ですね。マコはどちらかと言うと乙女っぽい衣装が良いと思うわ。……つーか、マコ。あんた大丈夫?なんかプルプル震えているわよ。マコの筋力でお姫様抱っこは正直かなり無理が―――」
と、悦に入る柊木をよそにカナーがマコにそう問いかけた瞬間。
がくん
「「「あっ」」」
カナーの懸念は大当たり。マコの力では支えきれなかったようで柊木を抱えたまま崩れ落ちるマコ。慌ててマコと柊木を助け起こそうとした私たちだったけど間に合わず、マコはその場で倒れ込む。
「…………」
「はわ、はわわわわ……はわぁあああああああ!!!???」
『王子様のように』という前提条件があったからか。はたまた優しいマコの本能が後輩を守らないといけないと無意識に働いたのか。催眠状態で倒れ込みながらも後輩を床に激突させまいとしっかりと後輩を抱き寄せていたマコ。
傍から見たら倒れたヒロインを抱き起す、乙女ゲームの王子様のような形で止まる。
「ああ、もう……もう!あたし死んでもいいわ……!」
お姫様抱っこに加えてこのシチュエーション……予期せぬハプニングにこれまで以上に胸は高まり、確かに心に強い衝撃を与えていた。
勿論催眠を解かなきゃいけないマコの心ではなく……後輩の心に、だけど。
早くも暗雲立ち込める。…………ねえそこで鼻血出して悶絶してる柊木?これマコの催眠を解くためにやってるんじゃなかったっけ?やっぱコレ……マコが催眠状態なのを良い事に、自分がしてほしい事をやらせているだけなのでは?
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