ダメ姉は、部活に入る(後編)

「「「そりゃ決まっているでしょう。折角部活に入ってくれるなら、やっぱり―――優秀な人材が欲しいからよ」」」


 どうして私を勧誘してきたのか?その問いに対する先輩たちの答えがコレだった。その一言に私の脳は一瞬活動停止。

 ……優秀?え?誰が?


「……あ、の?」

「?何かしらマコちゃん」

「先輩方……もしかしなくてもですね……」

「「「うん」」」

「別の人と……具体的に言うと、双子の妹のコマと……勘違いしてませんか?」


 ……この人たち、さてはダメ人間な私を完璧超人なコマと勘違いしていないだろうか?入学して日が浅いから、コマと私の区別がついていないのでは?

 そう考えるとすべて腑に落ちる。コマならばどんな部活であっても第一線で活躍できるだろう。何においてもパーフェクトにこなす我が自慢の妹を部に招きたいと思うのは当然の事だよね。


「ううん、勘違いしてないわよ。……まあ確かに、貴女の妹の方の―――コマちゃんも。貴女同様に欲しかったけどね……」

「でもあの子……勧誘する前からずっと『私……入りたい部活は決まっています。ですので勧誘しても無駄ですよ』ってかなり早い段階で宣言してたのよね……」

「え」


 なにそれ知らない……こ、コマ?入りたい部活あったの?聞いてないよ!?そ、そういう大事な事はお姉ちゃんに一言相談しておいてくれないかな!?私、コマに付いて行きたかったんだけど!?じ、地味にショックだ……


「ま、まあコマが入りたい部活があったのは良いとして……だったら、なじぇ?なんで先輩たちは私を勧誘してきたんです?自分で言うのも悲しくなりますけど、勉強も運動もその他の才能もまるでないダメ人間オブダメ人間なダメ人間。それが私、立花マコなんですが?」


 少なくともわざわざ追いかけて罠に嵌めてまで捕まえるほどの人材じゃないと思うんだけど……


「「「とんでもない!」」」

「ひゃん!?」


 途端先輩一同から、否定の声が一斉に上がる。


「マコちゃんは自分で気づいていないの?さっきまでのあの素晴らしい逃げ足……アレはもはや才能よ!」

「え……逃げ足が、才能……?」

「そう、あなたには才能がある!是非とも鍛え抜かれたその脚を我が陸上部で発揮すべきよ!」


 コマやカナカナ、レンちゃんから容姿とか料理の腕を褒められることはあったけど、逃げ足を褒められたのは流石に初めてだわ……


「あっ、テメ抜け駆けは許さん!こいつの言う事は聞かなくていいよ立花さん。私たち全員を手玉にとったその脅威の体力と素早さ……立花さんにはテニスプレイヤーとして天性のモノがあるわ。だからそう立花さん!私たちテニス部と一緒に青春を謳歌しない!?」

「いーや!ここは我らバスケ部に!」

「あの体幹の良さは体操部向きでしょ!?」

「ダメダメ!マコちゃんはパルクール部に決まりよ!」

「ハァ……何バカな妄言垂れ流しているんだか。いいかアンタら。この子には格闘技の超絶的な才が秘めている。これはもう、マコくんは女子総合格闘部へ入るしかないな」


 私を取り囲み口々に勧誘してくる運動部の先輩たち。……しまった。どうやら運動部相手に派手に逃げ回ったから……余計に目をつけられちゃった模様。

 いやあの……すんません。期待させて申し訳ないですけど。私の取柄、逃げ足だけで運動は本当にからきしなんすよ……


「……って、ちょい待ち……じょ、女子総合格闘部……!?」

「おぉ!もしや興味を持ってくれたのかいマコくん!良かった、なら早速手続きをだね」

「いや待って先輩、何故そんな部活が私を勧誘してんですか!?格闘技とか生まれてこの方一度もやった事ないですよ!?」


 聞き逃そうとしたけれど、聞き逃せず思わず聞き返してしまう私。他の部活はともかく……か、格闘!?貧弱過ぎるこの私を何で格闘部に勧誘してんのこの人……!?


「ふふ、謙遜するなよマコくん。私は知っているぞ。……君が中学生の時、犯罪者に捕らわれた妹さんを助けるために単身犯罪者の巣窟へ乗り込み、大人相手に大立ち回りをし……見事に悪漢共をその拳を使ってKO、そして逮捕したのだろう?」

「え……」

「あのニュースが流れてからずっと、君の事が気になっていたんだ。まだ中学生だというのに大人の男を倒せる勇敢で逞しい女の子……会えるのを楽しみにしていたよ私は」

「い、いやあれは……」


 あ、ああ……中学の時、確かにそういうことがあった。あったのは事実だけど……使ったのは自分の拳ではない。主に金的への不意打ち・催涙スプレー・スタンガンを使用した、格闘技をやっている各方面の方々に申し訳なく思うえげつない外道な方法でKOしたんですが……?


「つい先日も、妹さんにナンパしようと近づいたり、妹さんに痴漢をしようとした不届き者共をたった一人で再起不能にしたとか。君のように強く、そして妹の為ならば死地に赴くのも厭わない気高い精神の持ち主が我が部に入ってくれるなら最高だ。さあ……さあ!早く私と共に心も身体も鍛え、そして全国にその名を轟かせようじゃないか!」

「……」


 すみません、コマを守る為ならどんな相手だって立ち向かうし誰にも負けない自信はありますけど。それ以外の場面じゃ小学生にも負ける自信ありますよ私……

 ……む、無理!格闘技なんて無理ですってば!?


「う、運動部の皆さんの言い分はわかりました。それは一旦置いておくとして……何で?ねぇなんで文化部の皆さんもそんなに必死になって私を勧誘してくるんですか!?」


 これが例えば料理部とかならともかくだ。他の部活動から勧誘される謂れがない気がする。私不器用だし、頭も悪いしで力になれる気が全くしない。

 いや、寧ろ役に立たんどころか足引っ張る未来しか見えないんだけど……一体なんの琴線に触れてこの人たちは私を勧誘してきたんだ……?


「それはね、貴女がダイヤの原石だからよ」

「……は?」

「わからない?貴女が、磨けば光るダイヤの原石だって言ってるの」


 何やら力説してきた見知らぬ先輩。すみません、まるでわかりませんが……


「私メイク部の部長なんだけどね。授業の関係で、貴女のお友達の叶井かなえちゃんから聞かされてたのよね。『わたしの嫁―――もとい。わたしの一番の親友におしゃれっ気ゼロだけど素材が最高な素敵な女の子がいる』って。実際私も一目見てかなえちゃんと同じ感想を持たざるを得なかったわ。マコちゃん!貴女にはメイクモデルとして、私たちの力になって欲しいのよ!入部してくれたらオシャレのすばらしさを骨の髄まで教えてあげるわ!」

「あたしもあなたの友人……麻生姫香さんから聞いていたわ。なんでも妹ちゃんに着せるコスプレさせる為のお洋服を自作しているんですって?……そういう趣味があるならあたしたち被服部が歓迎するわよ!ちょうどロリ巨乳のサンプルモデルも欲しかったし、是非被服部に!」

「料理部です!清野先生から聞いてます!『千年に一人の逸材が入学してくれたんです!』と先生大絶賛してました!あの先生にそこまで言わしめる貴女の料理の腕を見込んで、料理部に入っていただきたいんですッ!」


 どうやらカナカナたちから私の事を聞いていたらしい先輩たち。私を逃すまいと肩を掴んだり腕を取ったり、中にはこっそり私の手を取って入部届に拇印をしようとしている先輩も。


「あー!アンタらズルい!そういう話なら我が写真部に入部して!マコさんの妹さんを盗撮したあの写真にはとんでもない情熱を感じたわ!今なら高性能カメラをマコさんの為だけに貸し出しちゃう!どうか我が写真部を宜しく!」

「ぶ、文学部……です。双子の妹さんと恋仲にあると……聞きました。赤裸々な、姉妹の愛を育んだ経験を元に……それを文字で表現しませんか……?」

「貴女の交友関係の恐ろしいまでの広さは、情報部にとって宝よ!だからうちの情報部へ!」

「ダメダメ。あんたら全員この子の本当の才能に気づいていないわね。……この子、相当の女タラシに成れる器よ。女にモテるタイプと見た。ここは是非とも女子限定恋愛研究部で座学と実践を交え、その才を磨いて―――」

「ちょ……せ、先輩方、ちょっと落ち着いて…………ぐぇ……!?」


 雪崩れ込むように他の部活も勧誘合戦に参戦してきた。どの部活も私をどうにか懐柔しようと押し合いへし合いの混戦模様。その騒ぎの中心にいる私はもうもみくちゃ。


「あっコラ!マコちゃんは陸上部が頂くって言ってんでしょうが!?」

「ふざけるな。マコくんは女子総合格闘部のモノだと言っていただろうが」

「バスケ部!」「テニス部!」「バレー部!」「体操部!」「卓球部!」「パルクール部!」


 更に最初に勧誘してきた運動部の皆様まで加わって、その激しさはさらに増す。


「あ、あの……先輩方?ここは……公平を期す為に……私、帰宅部に入部するというのはどうでしょうか―――」

「「「ダメ」」」

「デスヨネー…………って、いだだだ!?痛い、痛いですって!?離してくださ…………お、折れるぅううう!?」


 私の意見は一蹴され。この場はまさに混沌と化す。や、ヤバイ……逃がすまいと縄で縛られているせいで全く抵抗できない……物理的に押しつぶされそう……だ、誰か助け……


「あ、貴女たち……一体何をしているんですかぁ!?」

「ふぇ……?」

「「「……?」」」


 と、そんな私の心の中のSOSが通じたのか。突然閉め切っていた扉が開かれ、そこから一人の女性が現れたではないか。お、おお……?この声は……


「な、なんだか騒がしいと思って来てみれば……二年生、三年生の先輩たちが寄ってたかって一年生一人を追い立てて、もみくちゃにして……!上級生として恥ずかしくないんですか!?」

「きっ……清野せんせー!」


 先輩たちの間に割って入り。私に駆け寄り縄をほどいてくれたのは……この学校の教師にして、私が尊敬する料理の師―――清野和味せんせーだった。


「ああ、マコさん……!……け、怪我はない?大丈夫?」

「あ、あはは……大丈夫です……すみません、助かりましたせんせー……」

「よ、良かった無事で……コホン。それで、これは一体何の騒ぎですか!ま、まさか……いじめですか!?」

「「「いいえ、ただの部活勧誘です」」」


 ちょっと待て。2,3年生総出で一年生一人を追い立てて罠に嵌め。そしてリアル大岡裁きを繰り広げておいて『ただの部活勧誘です』は無いと思うの私。


「部活勧誘……?あ、あー……そっか。今日って勧誘解禁日だもんね……」


 そしてそれを簡単に納得しないでくださいせんせー……!もしかしなくても、この学校の部活動勧誘って毎年こんなにハードなんですか!?


「あ。で、でもですよ!?い、いくら勧誘解禁日だからって……こ、こんなに強引な勧誘とか。本人の意思に沿わない勧誘は……だ、ダメですっ!ちゃんと規則にも書いてあるでしょう!?マコさん嫌がってるじゃないですか!」

「「「う……」」」

「全くもう……よく見れば、うちの料理部までいるじゃないですか……こんな事、二度としないようにしてください。……ごめんなさいねマコさん。ビックリしちゃったでしょう?良いのよ。先輩たちが何と言おうと、マコさんはマコさんのやりたいことをやれば良いのよ」


 おお、流石は教師。あれだけ騒ぎまくって収拾がつかなくなっていた先輩たちを鶴の一声で黙らせて。そんでもって優しく私をフォローしてくれる。

 普段は気弱っぽいけれど、やっぱせんせーも立派な先生なんだね。改めて尊敬しなおしちゃうわ。


「……で、でも清野先生。先生だって……料理部にこの子を入れたいって思っているんじゃないですか?」

「「へっ?」」


 なんて思った次の瞬間。料理部の部長さんの一言で空気が変わった。


「い、いやね……なに、を……言っているのかしら……?」

「先生言ってたじゃないですか。『マコさんを鍛えるには授業とか特別授業だけじゃ足りない……いっそ料理部に入ってくれたらいいのに』って『そしたら付きっ切りで楽しくお料理教えてあげられるのに』って」

「い、いいい言った、かしら……?で、でも……さ、最終的に入部するかしないかはマコさん本人の自由で……わ、私としても……マコさんの好きにして貰えたらって……」

「先生、建前は良いです。本音はー?」

「ほ、本音?何の話を……」

「ほい、お玉どうぞ」

「あっ……だ、ダメ―――」


 手慣れた手つきで料理部の部長さんは清野せんせーにお玉を手渡す。あ、まずい……清野せんせーに調理器具持たせちゃうと……


「…………本音を言えば?そんなの―――マコくんを料理部に入れたいに決まっておるわ!マコくんは、我が料理部のエースとなれる逸材!全国大会優勝も夢ではない!そして何より……マコくんこそ私の後継者になる女よ!片時だって離さぬ!放課後はねっちりと私と一緒に個人レッスンよ!その為には料理部に入れるほかあるまいて!」

「ああやっぱし……」


 性格が豹変し、鬼軍曹モードに移行した清野せんせーは私を抱き寄せてそう宣言する。いかん、更に収拾がつかなくなった。


「ちょっとぉ!?先生ズルい!一教師が自分が顧問してる部活にお気に入りの生徒入れようとするなんてルール違反だと思いまーす!」

「ルールなど知った事か!マコくんは誰にも、そう誰にも渡さぬわ!」

「皆聞いたわね?教師がルールなんて知らないって言ったわよ!言質取ったわ!」

「こっからはルール無用、手加減無用の勧誘合戦よ!」

「最後に立ってた部活動が、マコさんを手に入れられるって事ね……いいわ!シンプルでとてもいい!」

「や、やめてー!?」


 あろう事か止める側のせんせーまで参戦しこれ以上なく混沌極まる部活動勧誘戦争。賞品の私目掛けて一斉に先輩たち(+清野せんせー)が飛び掛かってくる。

 い、いや……ダメ……た、助けて……


「た、助けてコマぁああああああああ!カナカナぁあああああああ!?」







「お待たせしましたマコ姉さま」

「遅くなったわね、ごめんマコ」

「へ……」

「「「んなっ!?」」」


 そんな悲鳴を上げた直後。飛び掛かってきた先輩たちを容易く投げ飛ばし、そして私の手を取る二人の王子様。


「……さて。先輩方?これはどういう事でしょうか?私の、マコ姉さまがどうしてこんなにも怯えているのでしょうか?」

「よく見れば生徒の暴走を止める側の教師までいるわね。わたしの、マコに酷い目を合わせるだなんて……いくら先輩や先生とはいえ黙っていられませんよ」

「こ、コマ!?カナカナ!?」


 私のピンチに颯爽と現れたのは、双子の妹にして嫁のコマと。生涯の親友であるカナカナの二人。頼もしい二人に守られて、いかん私また二人に惚れなおしそう……


「……やほーマコ。無事かー?」

「と、ヒメっちまで!?」


 ついでに何故かもう一人の親友のヒメっちまで来ていた。


「くっ……不味い……厄介な保護者たちが来たわね……」

「な、何をしてたって……見ての通りよ。部活勧誘だけど?」

「い、いいじゃない!どんな部活か知らないけれど入りたい部活が決まっている貴女たちと違って、マコちゃんはまだどこの部にも未所属よ!だったら誰がどこの部に勧誘しても問題ないわよね!?」


 コマとカナカナに睨まれて、流石の先輩たちもタジタジになっている様子。それでも私の部活動加入が諦められないようで、目を逸らしながらもそう講義してくる。

 そんな先輩たちに対して、コマとカナカナはフッと微笑を浮かべてこんな事を言い出したではないか。


「申し訳ございません先輩方。マコ姉さまがあまりにも魅力的過ぎて自分たちの部活動に入っていただきたい……そのお気持ちは痛いほどわかりますが」

「残念ですけどね。この子も入る部活決まっているんですよ」

「「何せマコ(姉さま)は……私たちが新設した部活に入るんですから」」

「「「はぁ!?」」」


 この発言には先輩ズは勿論のこと、当事者の私も思わず聞き返してしまう。いやあの……コマにカナカナ?私、そういう話一切聞いていなかったんだけど……?


「ちゃんと新設にあたっての条件もクリアしてきましたよ」

「新しい部活を新設するには最低4人の部員が必要。わたし、マコ。それにコマちゃんに……おヒメ。この4人でちょうどだから部員数に関してはクリア」

「……ぶっちゃけ私、数合わせー」

「それで良いのかヒメっちよ……」

「……まあ入りたい部活なかったし、マコを助けるためだから良いさ」


 なんでこの場にいるのかと思ったら……すまんヒメっち、巻き込んだね……


「そして教師5名の許可があれば新設できる……その許可もつい先ほど頂きましたよ」

「先生たち脅迫―――コホン。説得するのに時間かかり過ぎて、マコを助けるのが遅れたけど。これでもう安心よマコ。入部さえしておけばこの先輩たちも迂闊にマコを拉致まがいの勧誘は出来ないから」

「と、言うわけですので先輩方。姉さまから……今すぐ離れなさい」

「そんでもってどうかこのままお帰りください。もう朝礼も始まりますんで」

「「「そ、そんなぁ……!?」」」


 大いに落胆した表情を見せる先輩たち。後ろ髪を引かれる顔をしながら私を見つめてくるけれど。最強の私の守護者二人を前には太刀打ちできないといった顔で渋々と部屋を出て行く。

 ……えーっと。よくわからんが、知らん間に嫁と親友が暗躍してたお陰で私助かった……のかな?


「……すみません姉さま。私たちの独断で勝手に部活を決めてしまって」

「悪かったわね。でも……仕方なかったのよ。変な先輩や先生がいなくて、且つわたしたちの目の届く部活に入ってもらわないと危機管理能力のないマコじゃ……色んな意味で危なそうだから」

「あーうん。大丈夫。なんかこっちこそごめんね。私の為に色々手回ししてくれたって事だよね?」


 なんにせよ。これで理不尽に追われたりすることもないって事っぽい。二人には……ああいや、ヒメっちも含めて三人には感謝する他あるまいて。


「それにしても……そっか。コマの入りたい部活があるって……これの事だったんだ。…………あれ?ちなみに二人とも?」

「はい?何でしょうか姉さま」

「何か聞きたい事でもあるのマコ?」

「部活、新しく作ったのはわかったけど……具体的にどんな活動するの?」


 もしやアレか?中学時代にやった……ボランティア部『生助会』みたいなお仕事をまたもしなきゃいけない流れだろうか?あれ結構大変だったから高校はそういう部活やりたくなかったんだけどなー……

 そんな私の問いかけに対し。二人はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの表情で答えてくれる。(そして何故かヒメっちは必死で噴き出すのを耐えている)


「安心してください姉さま。そう難しい部活ではありませんよ」

「何せマコは居てくれるだけで部活動が成り立つ部活だものね。その上わたしたちにとって最高の部活動って言えるし」

「ふーん?そうなんだ。それは楽しそうで良いね。それで、具体的にはどんな活動するの?」

「簡単です。日々マコ姉さまの生活記録を綴ったり」

「……ん?」


 おや……?


「マコの活動記録を写真に収めたり、マコをスケッチしたり」

「……んん?」


 なんだろう、なんか雲行きが怪しくなってきたような……?


「時に部員同士でマコ姉さまの良さを語り合ったり」

「時に部員同士でマコと触れ合ってみたりする部活」

「「その名も!」」

「そ、その名も……?」

「「立花マコを愛でる部活―――マコラ部!」」

「…………」

「……マコラ部て……ぷぷっ、マコラ部って……!」


 ……なんでヒメっちが爆笑しそうになってたのかよくわかった。マコLove→マコラブ→マコラ部……って事……?あまりにアレな発言と発想に私は頭を抱えつつ一つ思う。

 我が妹よ。そして親友よ。活動内容については敢えてツッコまないけどさ……もうちょいマシなネーミングはなかったのかね?



 ―――後日―――



「―――と、言うわけで。ごめんレンちゃん……部活動にはレンちゃんの為にも入らないって約束してたけど……そういう理由があって、そんなおかしな部活に入ることになったんだよ……」

「そ、そんな……そんな…………ま、マコ先輩っ!酷いっ!」

「ほ、ホントにごめんっ!あれだけ約束しといて結局部活動に入るだなんて、レンちゃんには申し訳なく思う―――」

「本当に酷いです…………なんで、なんで……なんであたしを、そんな素敵な部活に入れてくれないんですか!?」

「…………は?」

「二年後には、必ず入ります!あ、いえ……二年後じゃ遅すぎる……い、今からでも!今からでもどうにか在籍させてください!あたしも、先輩愛でたいんですぅうううう!!!」

「えー……」

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