第923話

 この甘い匂いが神経ガスの一種だと思った時は、既に遅かった。


 ジュリアも失神したのか、血まみれのアンジェラの上に折り重なるように倒れた。


『フッフフ……』

 背後でくぐもった笑い声が聴こえた。

「う、ゥ……! お前が!!」

 オレは振り返って背後の男の顔を見た。


「う!!」

 ガスマスクを被っているため正体はわからない。

 タダ手の甲に蜘蛛のタトゥが刻まれてあった。


「お前が…… ク、蜘蛛の……?」

 そのまま意識が遠退いていった。


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