第53話 次々、開けていった

 次に母親はクローゼットをアゴで差した。

「ここ……、もう一度、開けてご覧なさい」

「え……? な、何で誰も居ないって…、勝手に開けてみれば」

 ボクも今、ドアの前を離れる訳にはいかない。

 母親は、クローゼットと押し入れを次々、開けていった。

 もちろん、そこには、影も形もない。


「ちょっと~…、開けたら、ちゃんと閉めろよ」

「フゥ…ン」母親は鼻息も荒く、クローゼットを閉めた。







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