第14話
子どもの頃に、僕を助けてくれた変身ヒーロー。それまで憧れていたヒーローの色よりも少しだけ薄い色が持ち色で、優しそうな笑顔が可愛いお姉さんだった。
あの色を担当するヒーローはあまり強くないというのが世間一般の印象だったけど、僕を助けてくれた彼女に限って言うなら、全然そんな事は無くて。
強かった。そして、とても格好良かった。
それまではずっと、もしヒーローに会う事ができたらサインを貰おうって思っていたのに、そんな事も忘れてしまうぐらいに魅入ってしまっていたっけ。
彼女と一緒に戦いたい。そう思った。それが、その日から僕の夢になった。
けど、僕は類稀なる運動音痴で、一緒に戦うなんて夢のまた夢も良いところで。
だから必死に、僕でも戦える方法を探した。考えた。図書館に通って勉強したし、毎日ジョギングをするようになった。
そうして方向性が見えないままに懸命に努力をしていたら、周りの大人達がアドバイスをくれた。運動音痴で運動嫌いだった筈のお前が毎日ジョギングをするなんて、よっぽどその夢を叶えたいんだろう、って言って。
戦う方法は、何も殴る蹴るだけじゃない。戦士のサポートをする事だって、大切な仕事で、敵と戦っている事には変わりは無いんだ。
目からうろこが落ちた思いだった。そうか、サポートだったら、運動音痴の僕でも彼女と同じ場所に立つ事ができるかもしれないんだ、と。親や教師と相談に相談を重ねて、技術班を目指す事を決めた。
毎日塾に通う必要があるほど勉強漬けになったが、具体的な目標ができたからか、全く苦にならなかった。激務だと噂の技術班に所属しても大丈夫なように、健康な体作りをしようと心がけて、好き嫌いを無くして何でも食べるようになった。睡眠もちゃんと取ったし、ジョギングも続けた。
全く、あの頃の僕は一体どんな凄まじいスケジュール管理能力を有していたんだろう、と、今となっては驚くしかない。本当に、あの頃の僕に今の僕のスケジュール管理をしてもらいたいぐらいだ。
勉強しているうちに機械にもどんどん興味が湧くようになって、更に勉強した。壊れても良い機械は自分で次から次へと分解して、組み立て直したりした。
自慢じゃないけど、気付けば設計図と材料さえ用意してもらえれば、大抵の機械は一人で作れるようになっていたし、よっぽど大きな物でなければ修理できるようになっていた。周りの大人達は、「まさかここまでやるとは……」って驚いた顔をしていたっけ。
そうして僕は、順調に戦隊をサポートする技術班への道を歩んでいき、そして実際、所属する事が叶った。
合格がわかった日には、どれだけ喜んだ事だろう。これで彼女と一緒に戦える、と、慣れない酒で祝杯を挙げて、二日酔いになったりもした。
少し残念な事に、彼女とは接点がやや少ない技術四班だったが……この仕事も、慣れてくるうちに楽しくなってきた。接点が少ないと言っても、彼女と会う事はできるんだし、名前も憶えて貰えたし。
技術班に所属していなければ、そもそも名前を知ってもらう事も無かったし、日常生活で出会う確率も格段に落ちていた。そう考えると、やはりこの職を目指してきて良かったな、と思う。
仕事はハードだが、先輩達は優しくて頼りがいがあるし、好きな機械を存分に扱う事ができる。次はもっと手早く作業を行えるようにしよう、先輩達に「やるなぁ!」と言われるようになりたい、彼女に「すごい!」と言って貰える日が来たら、天にも昇る心地だ。
そんな風に、常に目の前の目標を追う事に夢中だったから、考えもしなかったんだ。
僕より五歳年上の彼女は、いつ戦隊からいなくなってしまってもおかしくないんだって事を。
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