MEMORYS

玻璃

仮面



「……別れよう」


 それは、本当に突然やってきた。


 高校一年の時から付き合い始めて、今年で四年目。大学が遠く離れてしまって高校生の時のように毎日は逢えなくなってしまったけれど、私達は順調だった。

 ついこの間だって二人で花火大会に行ったし、旅行の計画だって立てていた。

「ど……うして?」

 やっと出てきた声はひどく掠れていて、自分がどれほどショックを受けているのかが解る。

「……ごめん、他に好きなコが出来た」

 まるで死刑を宣告された気分だ。

「そう……なんだ……」

「……お前は強くてしっかりしているから、俺がいなくても平気だよな?」

 イタイ。

 我侭を言って困らせたくなくて、しっかりしているフリをしていた結果がこれだなんて。

 “違う、そんなことない”って言えたら、どんなに楽だろう?

 でも私は……

「……そうね。きっと大丈夫だわ」

 今まで被っていた仮面を外せない。

 優しいキミがこの事を打ち明けるのは、どんなに苦しかっただろう。だから。

 私から解放してあげる。


「さよなら」



 泣けないわたしの代わりに雨が降ってくれればいいのに。

 あの時本当に言いたかったのは“さよなら”なんかじゃない。




「……行かないで……」




 けれどあの手を離したのは私。


 本当に強かったら、良かったのにね……。









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