第6話 Vの来訪

Bは、Aが大人しくなると、外で活動出来るようになる。

大体、Aが現実世界で悩み始めると、Aが自分で解決出来ないようになると、出てこられた。


色んな自分に課したルールを破る為に、Bに頼る。

悩みが増えていくと、AとBの勢力図が変わっていく。

生活サイクルから、物事の進め方、そして我慢をしなくなる。


傍から見ると、どうしてしまったのだろうと思われるような言動をする。

周りとの協調という点では、苦手なので、Aが度々出てくる



そんな状態になった。

それが続き、夢の中の会話でもAはBを消せなくなっていった。


疲れも取れなくなり、病院へ行くようになった。

疲れの原因がストレスにあると言われ、色んな検査をした結果、DDを利用した最新療法を勧められた。

治療で何度かDDに入る事になった。



病室には、DDに入る為の装置と白衣に丸眼鏡の大柄な男が立っていた。

「こんにちは。群依です。

これから中であなたのストレスの原因となっている理由を解明し、解決していきたいと思います。

恐らく、ショックを受ける事も多いかと思いますが、根気強くいきましょう。」

その男は、外見は全く違っていたが、自分と似ている印象を受けた。

「よろしくお願いします。」





そこは夜の高層ビルの上だった。

男が2人、言い争いをしている。

同じような体格の2人だった。


一人が興奮し、一人は冷静だった。

興奮している方の一人がもう一人に掴み掛かり、もう一人は抵抗しない。

その状態でも口論は続き、最後には冷静な方が興奮している方を消してしまう。

体が一瞬で煙のような気体に変わり、消える。


同じ光景が隣のビルでも、別のビルの屋上でも行われていた。

結果はいつも同じ、一人が消える。


消えても消えても、元に戻る。

そんな光景をずっと見ていた。


けれど、その内、片方が消えなくなる。

同じように、冷静な方が相手の方に手を置くが、消えない。

そして、口論が続く。




「気付いたかい?」

後ろから声が聞こえた。さっきの医者だった。

「はい。」

「そう、あれは2人とも君だ。

こんな言い争いをずっとやってるんだ。」

「はい。」

「知っていたのかい?」

「何となく、、は。」

何度か、占いをやった事があって、その度に言われていた。

「君は君の内面で矛盾している」

と。

「これを、絶えずずっと続けているんだ。」

「ずっと?」

「ずっと、冷静な君が勝っているんだ。

元々は、バランスが取れていたのだろうけどね。」

「・・・。」

「小さい頃から、浮いてると思った事が多かったのかな。

恐らく、本来の君は周りとの協調性の為に自分を犠牲にする事にしたんだろうね。」

「そして、今の力関係が生まれた。」

「けれど、何がキッカケか、我慢が出来なくなったのかな。」

歩きながら、話し続ける。

「こういう、内面で葛藤している人は割と多いんだ。

まれに、もっと沢山の自分を持っている人もいる。」

そこで一度、顔を俯いた。

「けれど、君の場合ちょっと違うのは、矛盾してる部分が大きいんだ。」

「矛盾。。」

「その占い師は正しかった。

一方の意見を通すと、一方が我慢しなければならない。

要は、大体何をしても心の一部では我慢するという事になる。」

「私は、どうしたら。。」

「まずは、自分がそういう人間だと認めてやる事が必要だ。」

「認める?」

「これは、君には難しいかもしれない。

君自身が必要に迫られて、作り出したもので、そもそも頭のどこかでは気付いていた。

その上で、問題は拡大している。」

「・・はい。」

「そして、その状態から脱却する為には、どうしたら良いのかを知っている。

それを実践している。」

「??」

「矛盾した考えと言っても、お互いが納得出来る答えもある。

つまり、2人の自分を納得させる事を試みている。」

「。。」

「それで考えて考えて考え続けている。

それがずっと行われている対話なんだ。」

「・・・。」

「現状を打破しようと、考え続けている。

けれど、考えが一方に寄っている。

もう一方を蔑ろにしている。

その方が、答えは楽なんだ。」

「だから片方が消えているのか。」

「違うんだ。君が消しているんだよ。」

「!!」

「けれど、どんなに消そうとしても、消えないんだ。

何故なら、納得していないから。

君は、答えを出していないんだ。

迷っているんだよ。」

「迷って、、いますね。

答えも出すのが怖いんです。」

「君が心から納得出来る答えを出さないと。

その為には、目の前にない物を怖がってばかりじゃダメなんだ。

本来、君には挑戦したいという願望があるようだから。」

「そうですね。。」

「自分の心に向き合って、自分を納得させる答えを見つけないと、この状況は変わらないだろうね。」

「・・・少し、考えてみます。」


気付くと、朝だった。

病院だった気がしたのが、いつの間にか家にいた。

「病院になんて行ってなかったのか?」

独り言を言う。


疑問を残しつつ、会社に行く準備をし始めた。

夢の記憶は薄れ、頭に残ったのは、

「納得していない」

という言葉だった。


「お前は頑固だ」

と小さい頃から言われていたのを思い出した。

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