お寿司の大将。
数年前、
あるホテルに泊まりに行った時の事だ。
そのホテルでは、施設内に巨体なビュッフェが設置してあって、和・洋・中の食事が食べ放題。
中でも目の前でシェフがステーキを焼いたり、大将みたいな人がお寿司を握ってくれたりするサービスが本当に豪華で。
むむも真っ先にその大将にお寿司を握ってもらう事にしました。
むむが並んでいる間も、その大将は口をぎゅっと一文字につむんだまま無言でお寿司を握り続けていた。
その表情はいかにも堅物って感じで、
その一見怖そうな風貌から
『ザ・寿司屋の大将ってイメージだな』と
思ったりしてた。
見るとお寿司のカウンターの横に置いてあるパネルには、『私が握りました』というコメントと共にその大将がとても偉い有名な方の接客をしている時の写真が掲示してある。
「すごい…
本当に本格的な寿司職人さんなんだなぁ…」
そんな事を考えていたら、
むむが握ってもらう番になりました。
「…何を握りましょう?」
眼光鋭くそう大将に尋ねられたむむは
少し恐縮しながらこう答えました。
「…鯛と…まぐろと…
穴子をお願い致します。」
「…へい。」
大将は無愛想な表情のまま、
むむに注文された品を握りはじめた。
そして特別会話もないまま時が過ぎ…
そしてお寿司が出来上がった。
鯛もまぐろも見るからに新鮮で
穴子なんかは目の前でバーナーで炙って
下さった。
そして出来上がったお寿司の皿を渡しながら
大将はむむに向かってこう言ったのだった。
「熱いので気をつけて下さいね。
…そう、あなたのハートみたいに。」
「…え?」
そう言った大将は…
先程の姿からは想像も出来ない程に
ニヒルな笑みを浮かべていた。
堅物そうに見えた大将は…
全然堅物なんかじゃあ、なかった。
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