花火の梯子。君と出会ったあの日の花火は人生で一番輝いていた。あの日……君と出会えたのは、あの夜空に輝く花火があったから。

さかき原枝都は(さかきはらえつは)

プロローグ

第1話 大曲の花火

今年も、もうじきやってくる。

 秋田県は大仙市大曲の夏の最大イベント。

 大曲の花火の日が。

 人口およそ四万人弱の町は、その日だけは一変する。

 この日、大曲の人口はおよそ七十万人ぐらいまで膨れ上がる。

 私もその膨れ上がる人口の一人に入る。

 そして、秋田の夏はこの日を境にゆっくりと秋へと向かい始める。


 私はこの大曲の花火大会があったから、自分の足で一歩を踏み出すことが出来るようになった。


 私が始めて大曲の花火を見たのはあの年2012年。

 大曲の花火。「全国花火競技会」

 そう、この花火大会は日本全国の花火師が自分たちが織り成す一瞬、大空に咲き誇る大華を描き競う日。

 だから花火師にとっては特別な日になる。

 そして私にとってもこの日だけは一年で一番特別な日。

 この日があるから私は今ここにいることが出来ている。

 この日があったからこそ、私は一歩前に踏み出すことが出来たんだと思う。

 一瞬にして消えてしまう花火は、その雄大さと儚さの両面を私に見せてくれた。

 その雄大な力強い花火は一瞬にして消えてしまうけど、また必ずその花はきれいに咲き誇る。

 赤く青くそして金色に夜空を輝かせる花火。その色々は瞬(またた)く間に変化していく。

 そう私の心の様に……。

 人は一人きりでは生きていけない。

 人は支えられて、そして人を支えて生きている。



 だけど。

 私はある日を境に歩むのを止めてしまった。

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