最後の一日

それが起きたのはなんでもないある日のことだった。


その日も朝目覚ましのアラームでおきた。


起きた時刻は8時20分だった。一般の高校が9時から授業が始まるとするなら、少々遅い時刻ではあるが、この目になってからは人と話すことを避けるために敢えてこの時間にしている。



力を抑えているとはいえ、一目で相手の名前が、一分も相手を見れば考えている事は分かってしまうからだ。



目を覚ますと顔を洗いコンタクトを左目に着ける。このコンタクトはカラーコンタクトで、黒色のものを使い、金色の目を隠している。それが終わると朝食を食べ学校に向かう。



学校に着くのはいつもギリギリの時刻になるが、教師に怒られた事はない。



それは俺が成績優秀だからだろう。この目を使えばテストはすべて満点にできるし、この目で本を読めば全て理解できる。まぁ、全て満点だと流石にやり過ぎるので、いつも9割前後の点数している。



学校に着けば何時ものように授業が始まるチャイムが鳴る。

授業は何時も退屈だが、眠ってしまうほどでも無い絶妙な退屈さだった。



4限目の授業を終えて昼飯の時間である。それぞれ購買でパンを買いに行くものや、弁当を食べるものと様々だ。



俺も母が作ってくれた弁当を1人で食べていた。

そう1人だ。クラスには30人のクラスメイトはいるが、友達と呼べるのは1人もいない。まぁ、当然だと思う。何時も学校にギリギリに着き、会話しようともせず、会話しても直ぐに途切れてしまう。


周りから見れば暗いやつだと思われているのだろう。

そんな俺に話しかける人がいる

「ねぇ、一緒にお弁当食べない?」

相沢優奈さんだ。容姿端麗、成績優秀、おまけに性格も良しと男女問わず人気ものである。


だが、俺はこの人が苦手だ。確かに表面上は優しいように見えるが


(根暗に話しかけるなんて、私ってほんと優しいわ)


とこんな具合に自分をよく見せるために俺を利用しているのだ。


だから、

「ごめん相沢さん、俺は1人で食べたいんだ。」

と断っている。


「そっか、残念……。それじゃあ、また。」


そういった彼女は友達と共に何処かに行ってしまった。



彼女が去ると周りからボソボソと喋り声が聞こえくる。

“相沢さんかわいそう。” “相沢さんの誘いを断るなんて何様だよ。” “あの根暗野郎調子に乗りやがって‼︎” “それにしても相沢さんほんと優しいよな。” “あぁ、ホントそうだよな。あんな根暗な奴にも話しかけるなんて”



とこんな具合に俺は貶され彼女は持ち上げられる。…………だから苦手なんだ。



昼休みも終わり5限の国語の時間である。腹を満たした後は、とても眠く今は5月の中頃であるため、ポカポカとした陽気がさらに追い討ちをかける。


加えて今教鞭をとっているのはウチの担任の山内徹先生はゆっくりとした喋り方が特徴で、そのゆっくりさが耳に心地よく、授業が始まってから10分も経っていないが、クラスの何人も睡魔に負けている。



俺自身も睡魔に負け無いように踏ん張っていたが、それは起きた。



突如床が光り出したのだ。眠気と戦っていたクラスメイト達は大きな悲鳴をあげ、眠っていた生徒はその声を聞き起きると床が光っている事に驚愕し、先生は何時ものゆっくりさがなくなったように「早く教室を出なさい‼︎」と声をあげた。ただ、残念な事にその言葉を聞いた時には俺たちは例外無く光に包まれていた。

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