第132話(会話)
俺は気づくと、初めの方で見た不思議な空間に立っていた。と、
『こんばんは~、いや~、大変だったね』
「この声は、俺に特殊能力(チート)をよこした人物と同じ……」
『そうだよ本人だからね。君の活躍は見ていたよ。これからもよろしく』
「……これからってことは生きているのか? 俺。魔力を使い切った気がしたが」
『存在を“定義”する魔力は残るように“設定”してあるからね。というわけでこれからもよろしく~』
丸投げな雰囲気のある声を聞きながら俺は、ひとつづつ疑問を聞いていくことにした。
「それで、どうして初めに特殊能力(チート)を俺に選ばせてくれなかったんですか?」
『え~と、まあ、この能力が役に立ったし、それで勘弁してくれると嬉しいな』
とのことだった。
こうして会話をすると毒気が抜けていく、そう俺が思っているとそこで、
『他に何か聞きたい事はあるかな』
「何で俺を呼んだのですか?」
『適性があったからね。特に異世界人の中でも強い、特殊能力(チート)の適合性かな』
「……俺の世界に魔法はないのですが」
『あっても普通は認識できるレベルにまでの事象が起こせないだけだよ。君が知らないだけ。でも君達の世界の人間を選ぶ理由があるのだけれど……簡単に話す?』
「聞けるなら聞きたい」
どうして俺達のような異世界人を呼んで、特殊能力(チート)を持たせて放り込むのか。
それはそれで俺は興味があったので頷くと、
『実はこの世界の人たちって、一万年位前だったかな~。自身の“情報”を“魔力”の中に“保存”する方法を見つけたんだ。それにより肉体を捨てて“魔力”そのものになり“不老不死”と、全ての者が一つになる“争いのない世界”が一瞬だけ実現したんだ』
「……」
『ただ一つになれる、と考える事自体が間違いだったんだ。若い世代同士が古い世代と違う意思の疎通をしていて……それを古い世代は“分からないから”違う不気味な“同じもの”と認識してしまった。そういった“情報の共有”の失敗に過ぎないものを見て、若い世代はみな同じだと思ってしまった。少しその輪の中に入れば昔とほとんど変わっていないとすぐに分かったはずなのに、その時の古い世代は間違えて……一つの“同一”のものになれて、“争いがなくなるのでは”と錯覚した。折しも、魔法の中に“情報”が保存できると分かってしまった頃の出来事だった』
どこか懐かしいような響きをたたえながら、その声の主は言ったのだった。
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