第130話(最後の敵)

 次々と名前を語る“敵”。

 もうすでに操っている間に、彼は自分と他人の区別がつかなくなっているのかもしれない。

 だから、ほかの人間を傷つける事にためらいもないのかもしれない。


 そう思ってみていると、“敵”が笑いだす。


「そう、俺がすべてを支配すれば、すべてが一つになる。もう誰もこの俺を気づつけ、だれも私が傷つけることはなく……もっともすぐれた私が支配をする」


 その支配に対する欲求も、もしかしたなら他人のものであったのかもしれない。

 ふとそんな事を考えてしまったが、すぐに現れた魔物たちに向かい俺達は攻撃を仕掛けていく。

 先ほどのようにたくさん襲い掛かってくるので倒しやすいが、こちらに来るたびに倒したし甲斐が降り積もり、そのあたりの床が下に抜けるような音がしたが大丈夫かと俺は思ったりもした。


 そして再び魔物の集団も、まったく現れなくなる。

 安堵した俺は、一瞬、体の力が少し抜けるような感覚を俺は味わう。

 もしかして俺もここまで行くと限界が近いのか?


 そんな不安を覚えているとそこで、


「十分な時間稼ぎになったようだ。そこの異世界人もだいぶ弱っているようだしな」

「……最後の一つ、か?」

「そう、私の奥の手が……到着だ」


 勝利を確信したかのように敵は語り、そして彼の背後に巨大なトカゲの頭のようなものが見える。


「ドラゴン」


 絶句したかのようにシーナが呟き、“敵”が嗤って……そこで、ドラゴンの口が大きく開かれて、青い炎がそこにちらつき……無意識のうちに俺は、自分を守る行動に出ていた。


「ぎゃあああああ」


 敵の悲鳴が聞こえた。

 炎に包まれる瞬間を俺は目撃したが、それだけだ。

 ……支配できると自身の能力を過信しすぎていたのだろう。

 

 最後は自分の行動の結果が返ってきたようだ。

 そう思いながらも小売りの魔法などを俺は使ってどうにか自分や周りの人たちを保護する。

 幸いにも、ほかの人たちも全員防御関係の魔法を使っていたこともあり、こちらには被害がなかった。


 だが、生き残った俺達にはまだ、この最後に襲ってきたこの怪物を倒す役割がある。


「この力で、魔族の軍を焼き払う予定だったのか」


 俺のつぶやきにシーナが、


「それだけで済まないでしょう。……どうせこの城の城下町も焼き払う予定だったのでは?」

「なら、これからそうなる前にここで、倒さないとな」


 俺はそう返したのだった。



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あとがき

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