第131話「『顔』」



「でーすーかーらぁ~! ひざ掛けくらい没収しなくてもいいじゃないですか?

 って、話なんですよ!」

「まぁ、確かにそれは厳しすぎかもなぁ……」


「…………」


(え、何これ……?)


「『かもなぁ……』じゃ、無くて実際にウチの学校の校則って地味に厳しいんですよぉ~! 先輩だって、私より一年もこの学校にいるんですから、学校への不満の一つや百個くらいあるでしょぉ~~!」

「いやいや、流石に百個はねえよ。まぁ、でも……一つや二つくらいは簡単に出てくるな」

「でしょでしょ! 因みに……先輩の不満って何ですかぁー?」

「うーん『登校時間が早い』ホームルームの十五分前に来ないと遅刻っておかしくね?」

「分かります! 分かります! あれ、絶対にいらないですよね! 十五分前に来てもただ自習して待っているだけって……じゃあ、十五分も早く来なくていいじゃないですかぁ!」

「それな~……俺もそうだったら、あと十五分長く家で寝られるんだよな」


(まぁ、そのおかげで、今は毎朝ホームルームの前に朝倉さんと話す時間があるわけだけどな)


「…………」


(何で気付いたら安藤くんはこの後輩の子とこんな和気藹々としているのかしら……? 確か、安藤くんが『演説の内容考えてないから、一緒に内容を考えてくれない?』とか言い出して……そしたら、何故か話が後輩ちゃんの日ごろの愚痴になって、何故かその愚痴に安藤くんが乗り出して……こうして、気付いてみればいつの間にか私達の演説会場は他の生徒が来ないまま、後輩ちゃんの悩み相談みたいな感じになっちゃってるわね)


「ちょっと、貴方達いつまでそんな話を続けているつもり? もう、選挙演説の時間もなくなるわよ」

「あ、本当だ……なんだ。結局、俺のところは誰も来なかったな……」

「もぉーう! 先輩ったら、やだなぁ~! 私が来てあげたじゃないですかぁ~♪」

「お、おう、そうだったな……まぁ、来てくれてサンキューな」

「やだぁ~先輩ったらもしかしてテレちゃってますぅ~? 超ウケるんですけどぉー♪」 ペチペチ

「う、うるせぇい! 別に、後輩になんて照れたりしねぇし……だから、腕を叩くな!」


(ヤダ! 何この子!? 急にメッチャ『ボディタッチ』してくるんですけど!? この後輩ちゃんって、クラスだと絶対にカースト上位にいるようなイケイケ女子でしょ! ちょっと、お兄さんみたいなクラスの『ぼっち』には、そういうのは刺激が強いから止めてよね!)


「……貴方達、この短時間で結構仲良くなったのね。朝倉さんに告げ口しようかしら?」

「まて、委員長。誤解だ! 俺は何もやましい気持ちは無いぞ!?」

「えぇー、先輩酷い~! 私は先輩と仲良くなるつもりでここに来たって言うのになぁ~?」


「「は?」」


「アハハハ~! その顔、何ですかぁ? 面白ーい♪」


「いや……」

「まったく……」


(仲良くなるってどういう意味だ……あれか、美人局的な意味か?)


(この子ったら……一々、人を弄ぶような発言して私達をからかっているのね)


「アハハハ! 冗談、冗談ですよぉ~あ、もしかして本気にしました?」

「俺……お前、嫌いだわ」

「安藤くん……気持ちは分かるけど、一応選挙期間中だからね?」


(いや、だってさぁ! そもそも、俺みたいな『ぼっち』にこういう『ギャルっぽい女子』って『ゴースト(ぼっち)タイプ』に『悪(ギャル)タイプ』が『こうかばつぐんだ!』って、くらいに相性が悪いんだよ!)



「お兄ちゃーん」



「ん?」

「あれは……安藤くんの妹さんじゃない。安藤くん、良かったわね。最後にもう一人、貴方の支持者が来てくれたみたいよ」

「でも、アイツ……この前、残ってたプリンを俺が食べたら『もうサクラお義姉ちゃんに投票する!』とか言ってたからなぁ……」

「数少ない支持者なのに、何やっているのよ……」


(いや、だって食べかけのプリンがテーブルの上に放置されてたら『もういらないのかな?』って思って食うだろ! 何が『明日の朝に食べようと思ってたのにぃいい!』だよ! だったら、冷蔵庫に入れとけって言うんだ)


「ふーん……あの子って先輩の妹さんなんですかぁ~?」

「ん、ああ……そうか、同じ一年生だもんな。もしかして、クラス同じだったりする?」

「残念ですけど、違うクラスですねぇー。あ! でも、顔は知ってますよ♪」


(ふぅーん、そうか~)


「じゃあ、妹さんが来たみたいなんで私は失礼しますねぇー……

 先輩、運が良ければまた会いましょう♪」

「ごめんこうむります……」

「安藤くん……」



「アハハハ! 超ウケる~じゃあ、失礼しまーす♪」 チラ


「もう、お兄ちゃんってばこんな所にいた……」 チラ



「おう、妹よ。お前が来てくれてお兄ちゃんは今、心の底からうれしいぞ……」

「お兄ちゃん、どうしたの? お兄ちゃんが気持ち悪いのはいつもの事だけど、今日はそれ以上に気持ち悪いよ?」

「妹の言葉が兄の心を抉るぅ!」

「妹ちゃん、容赦無いわね……」


(まぁ、確かに妹ちゃんがいる時の安藤くんは少し気持ち悪い言動が増えるけどね。あれ、もしかして安藤くんって『シスコン』?)


「ところで、お兄ちゃん……さっきの『女』は誰?」

「誰って、俺の応援? に来てくれた――そういえば名前聞いてなかったわ……」

「ふーん、あの子がお兄ちゃんの応援ね~」

「そういえば、お前と同じ一年だけど、もしかして名前とか知ってる?」

「知らなーい。でも、顔は知ってるよ……」

「そうか。ま、あっちもクラスが違うって言ってたし、名前を知らなくても当然か」

「…………」


(安藤くん、クラスが違うからって理由で同じ学年の生徒の名前を知らなくて『当然』だと思っているのは『ぼっち』の貴方だけだからね……?

 同じ女子で、普段から学内のポジションを気にする私には分かるわ。妹ちゃんとあの後輩ちゃんのお互いの反応……あれは確実に互いの事を良く知っているリアクションよ。それなのに二人が互いの事を『顔だけ知っている』って言うのは違和感ありすぎでしょ……)


「これはなんか嫌な予感がするわね……」


「むぅー……お兄ちゃん! 罰として、今日は私に高いプリン買ってもらうからね!」

「罰って一体何の罰だよ!?」








【次回予告】


「皆、いつも応援してくれてありがとう! 委員長よ。

 さーて、次回の『何故かの』は?」


いつもは別々に下校するのに、何故か『妹ちゃん』が一緒に帰ろうと誘ってきた!珍しい『妹ちゃん』の誘いを断るはずもなく、残った仕事を押し付けて帰ろうとするが『妹ちゃん』は選挙の結果を気にしているようで……


次回、何故かの 「妹は可愛い」 よろしくお願いします!


「たまには一緒に帰るもの悪くないよね♪」


* 次回予告の内容は嘘予告になる可能性もあります。




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