第14話「選択」
不必要な調度品はないもののところどころに高そうだと思えるランプや絨毯がある廊下を鳴は逃げた使用人を追って走っていた。
途中曲がり角を曲がると、メイドと警備員が振り向きざまに、バットと鉈で襲いかかり、
「うおっ! あぶね!」
膝以外を倒れ込ませ、某アクション映画のように避けた。映画と違うのはそのまま倒れず、片手をついて、体を回転させ、警備員に蹴りを入れ、警備員の体を足場にして上体を起こしメイドの頭上にふれる。
音叉の音がすると、すぐに警備員のほうも触れ、エコーズで中和し呪音を消した。
「6、7ッと! あと二人だな」
鳴が再び追いかけると、うしろ姿のメイドが一人だけ不気味に立っていた。
「ちっ、一人見失っちまったか? 大方どっかに潜んでんだろうが、まぁいい、先にあんたを呪音から解いてやる」
鳴が一歩近づくと、
ブオォオオオン!
「ん? なんの音だ」
その音の正体はメイドが振り返るとすぐにわかった。
ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
「おいおい、メイドがチェーンソー持ったって、全然萌えねぇぞ」
メイドの細身に似合わない大型のチェーンソーを鳴は見つめながら、余裕な態度を崩さなかった。
ギュイイン!
メイドは大きく振りかぶり、鳴の頭上から切りつけた。
「ウラァ!」
鳴は拳と拳でチェーンソーを真剣白刃取りの要領で受け止めた。
ギュイイイィィィィ! ギュィィィ! キュィィ……。
徐々にチェーンソーの音は小さくなり、動かなくなった。そして、
グニャリ。
鳴はチェーンソーの刃を折り曲げて動かなくなったのを確認してから手を離した。
そして軽やかな足取りでメイドの頭上に触れてからエコーズを放った。
ポーン!
すでに9度に渡り使用した音が通路に響いた。
メイドがそのまま倒れないよう、支えて両手が塞がったその瞬間、
バタン!
扉が勢いよく開き、最後の使用人である警備員が手に鎖を巻きつけて飛び出してきた。
鳴は何事もなかったかのようにメイドを抱えながら避けると、
ドゴッ!
警備員の拳により先程まで鳴がいた場所に穴があいた。
鳴はメイドをゆっくり寝かせながら、
「はっ! なかなかやるな! でもチェーンソーよりは迫力に欠けるぜ」
鳴は恐れることなく懐に飛び込み、紙一重の位置で警備員の攻撃をかわし、楽々と頭上に手を触れた。
*
(これは、マズイ展開になった。まさかあの男がここまでやるとは!)
近くの部屋に隠れ様子を常に伺っていた影は鳴の強さに焦っていた。
(監視など付けず、はじめから全力で当たらせるべきだった。そもそもチェーンソーを素手で止められる人間がいるとは……、仕方ない。私自ら出向くとしよう)
影は躊躇なく扉を開けた。
*
鳴が警備員に触れ呪音をコピーした丁度その時、不意に扉が開いた。
「こ、これは一体ッ!? みんな大丈夫ですか!?」
その人物が驚いたように口のところに手を当てたのを見て、意識がしっかりあることから鳴は操られた敵でないと判断し、
「なっ! こんなときに出てくんじゃねぇ、馬鹿野郎!」
まだ呪音を解いていない警備員と扉を開けた人物の間に盾になるように立つと、
ガシッ。
その扉を開けた人物から腕を握られた。
それを不安からの行動と取った鳴は声を掛けようとしたが、瞬時に腕に違和感を覚えた。
「てめぇ! まさか犯人か!」
(クククッ。今さら気づいても遅い。こいつの能力、エコーズと言ったか、それは、私の能力を打ち消すみたいだけど、2か所から攻撃を受けたらどうする?)
犯人は二ヤリと不気味な笑みを浮かべながらこれからの末路を見届けていた。
鳴が気付いた時には、警備員はすでに目の前に迫っており、今ある手持ちで警備員か己の腕かの二者択一を迫られていた。
「やれやれ、タコ殴りか操り人形かの二択か。さて、響の好きな戦隊ヒーローはどういう行動をとるかな?」
鳴は言葉では悩んでいることを言ったが、行動に迷いはなかった。
「SE~~! 迷惑掛けるぜ」
ポーン!
鳴は警備員の呪音を消した。
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