クモ

「あ、クモだ」


 そう。私は昨日、壁に一匹のクモを見つけた。

 私の左側に現れたそのクモは、そのまま右へとちょこちょこと動きだした。

 ツルツルの壁をよく這っていけるな、と感心して見ていると、第1の難所なんしょ「コーナー」にたどり着いた。ここでは綺麗きれいに90°曲がらないといけない。第1の難所にしてはハードルが高い。


 プルルルル♪


 なんだよ、こんな時に誰から電話だ?

 私はポケットからスマホを取り出す。電話ではなくメールだった。

 ちくしょう!


 私は一息ついて、クモの観察を再開した。

 クモは既に難所を突破していた。

 あー、見たかった。(後になって、何をやってたんだ……とため息をついたのだが、この時はなかなか楽しかったのだ)


 クモさらに進む。


 第2の難所は、「外側に270°曲がるコーナー」だ。

 この時私は、sin270°(高一の数学でやります!)ってなんだっけ?とか考えていた。-1だったっけ?

 クモは一度足を離して宙に浮いてみせた。そして、蜘蛛くもの糸とやらを使い元の姿勢をキープした。その忍者のようなアクロバティックな身のこなしは、観客(1人)を魅了した。

 そのまま、何もなかったかのように第2の難所もクリアした。


 しかし、これだけでは終わらなかった。


 しばらく進むと突然、1メートルくらいの高さから超人的な大ジャンプをみせた。


 華麗かれいに着地を成功させた後、クモは堂々と去っていた。

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