第118話 用件は勧誘です1

 歓……誘……?

 全員の目が点になる。


「おまえらどうしたんだ?クック鳥が投げ石を食らったような顔をして」


 異世界にも似たようなことわざはあるんだなと、そんな無駄な考えが浮かんだお陰で一番早く復帰した僕がみんなを代表して訪ねる。


「あの、勧誘って誰を何にですか?」


「ああ?おまえ今の話の流れで分からないのかよ。おまえら六人ともう一人を第三師団にだよ」


「いや、話の流れからはそうですけど、常識と照らし合わせて考えたらまだ五歳の僕たちを騎士団に入れるなんてあり得ないじゃ無いですか」


「なんであり得ないんだ?確かに子供を入れるのは今回が初めての事だが別におかしくないだろう。特におまえみたいなイレギュラーは放置できないしな」


 向けられた鋭い視線にたじろぐ。

 イレギュラーか。リベルトさんはどこまで知っているのだろうか。

 窺うような視線を向けていると、ようやく我に返ったフリッツさんが質問を発した。


「子供を騎士団に入れようとすることの是非はとりあえずおいておくとして、さっき言ったもう一人とは誰のことだ?まさかとは思うが……」


 そう言ったフリッツさんの視線を追ったリベルトさんは頷いた。


「そうだ。そこの女坊主の妹だ」


 そこからは侃々諤々かんかんがくがくの議論が巻き起こり、終息したのは十五ミニ経ってからのことであった。

 そして、落ち着いたところでリベルトさんが再び口を開く。


「そういえば、勧誘とは言ったが、女坊主とその妹、それからそこの女には拒否権はないぞ」


 リベルトさんは僕とフーシア、それからルーシェちゃんを指差す。


「……理由を聞いても良いですか?」


 僕が尋ねると、リベルトさんは不敵に笑って言う。


「こんなに人が居る中でその理由言ってもいいのか?」


 リベルトさんは窓から見える学校にチラッと目を向けた。

 その態度から恐らくリベルトさんは僕がやらかした事を把握していることを理解する。

 ルーシェちゃんの方は多分公都の事件の詳細を知っているからだろうなと推測し、僕は残りの人を勧誘する理由を聞く。それに対するリベルトさんの答えはこうだった。


「おまえの妹は、妹だから。それが理由だ。それから、残りの四人はワーウルフと言えば分かるよな。第三師団は見込みのある奴を勧誘しているんだ」


 ああ、なんとなく分かった。三歳であの状況から生還したからか。


「そうですか。まあ、選択権は無いみたいですし、僕は入りますよ。面白そうだし」


「おい、アヤトっ」


 僕の返答に父が激昂する。


「勝手に決めるんじゃ無い。俺は許さんぞ」


「いや、でも学校の事ばれてるんだよ。断っても結局連れて行かれることになりそうだし、だったら――」


「アヤト、一つ忘れていることがあるぞ。おまえらしくもない。こいつが本当に騎士団所属なのかどうか全く証明されていないじゃないか」


 父の言葉に全員がハッと息をのみ、視線をリベルトさんに向ける。当のリベルトさんはにやっと笑って懐に手を差し込んだ。そして――

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