第94話 いよいよ測定の時間です2

「めっちゃ緊張するな。」


「別に測るだけなんだからしないだろ。」


「……zzz。」


フリッツさんの前に並んでいつも通りな会話を繰り広げる三人。

僕としては、アレフに同意だ。

いよいよ、自分がどんな魔力を持っているか分かるんだぞ。

心臓がバクバクいっている。

なんとなく並んだ順番そのままで測定していくらしい。

アレフ、ビート、ギーム、ルーシェちゃん、僕、ミリアちゃんの順だ。


「始める前になにか聞いておきたいことはあるか?」


そう言ったフリッツさんと、その手前にある機械に目を向ける。

機械には金属板が二枚に、占い師が持っていそうな透明な球がついている。

その大きな本体からはケーブルが伸びて、窓の外に出ている。


「そのケーブルはなんですか?」


「……坊主、聞いて欲しかったのはそういう技術的なことじゃなくて、

ちゃんと測定するコツとかなにか特別なことをしないといけないのかとか

測る時に使うようなことを質問して欲しかったんだが……。

まあいい、せっかくの質問だ。簡単にだが答えよう。」


そう言うと、フリッツさんは窓のところに移動して手招きした。

そこに行くと、フリッツさんは窓の外の地面を指差す。

ケーブルの先端に付いている金属の杭が刺さっていた。


「これはアースって言ってな、正確に測定出来るように地面に差しておく必要があるんだ。

まあ、詳しいことはもっと大きくなってから学んでくれ。」


フリッツさんは再び機械のところに戻る。


「他に質問はあるか?」


誰も何も言わない。


「それじゃあ、始めるぞ。アレフから来い。」


機械の前に進み出るアレフ。

フリッツさんの指示に従って、左右の金属板にそれぞれ手を当てる。


「じっとしてろよ。」


フリッツさんが裏で何か操作すると、

透明な球が中心から光を放ち始めた。


「アレフは橙色か。」


フリッツさんはそう言いつつ、手元の紙に何か記入していく。

球から出ている光の色が魔力色ということなのか。


アレフは機械の裏側、フリッツさんの方に行き、なにやら紙を受け取った。

手渡す時、フリッツさんの言葉が少し聞こえてきた。


「これがおまえの特性数値で…………

いいか、無闇に人に教えるなよ。」


測定を終えて戻って来たアレフにビートが声をかける。


「紫じゃなくて残念だったな。」


「うるせーな。そんな事を言ってられるのも今の間だ。

次はおまえの番だぞ、紫だとい・い・な。」


茶化し合いながら、ビートが機械の前に立つ。

結果は……赤色だ。


「俺の方が上だな。」


「似たようなものじゃん。」


ちょっとすねた感じで戻ってくるビート。

次は……っと、


「起きろー、ギーム。次おまえだぞ。」


「うぅーん……」


ギームは目をこすりながらふらふらと機械のところまで歩いて行く。

そして、板に手を当てると……


「「ま……負けた。」」


アレフとビートが大げさに崩れ落ちる。

ギームの魔力色は黄色だ。

おぼつかない足取りで戻って来たギームは空いてる椅子に座ると寝息を立て始めた。


「はははっ、いつも通りだなギームは。」


「そうね、それじゃあ次は私、行ってくるわ。」


そう言うと、銀の髪を揺らしながらルーシェちゃんは進み出る。

そして、手を当てると……


「おお。」


これはだれの声だったのか、教室が少しざわつく。

機械の球は、彼女の瞳と同じ色、深い青色の光を放っていた。


「ここまで濃い青か……」


フリッツさんも思わず声を漏らす。

紙を受け取った彼女はこちらに向かって得意げな顔をした。


いや、まあ、この前の身体強化の時から天才だってのは分かってたんだけどね、

魔力色までこうなのか……。

で、これのライバルが僕?

大丈夫かな……


そう思いを巡らせていると、後ろからつつかれた。


「……次、アヤト君の番。」


「そうだった。行ってくるね。」


ミリアちゃんにそう応え、僕は機械に向かう。


大丈夫、神様から最強の魔法使いになれる才能をもらったんだ。

青とか紫とかのはず。大丈夫、大丈夫。


そう考えて、心を静めて両手を機械に当てる。


「フリッツさん、お願いします。」

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