第39話 公都の中を散策です2

「はあ、なるほど。

まずはフリッツ、アホじゃねえの。」


公都ベルバリアの広場で次に行く場所について

話していたところで、偶然やって来たユッドさんに

事情を話して帰ってきた反応がこれだ。


「公都のど真ん中で条例違反になることを堂々と言うとか、

何やってんだよ。」


「え……あ……う。」


おーいフリッツさーん、目が泳いでますよー。


「俺、騎士団長なのに、なんでうちの周りのやつが

こんなんばっかなんだよ。フリッツにしろオスカーにしろ。」


はぁ~、とため息をつくユッドさん。


「まあ、今更言っても仕方ねえな。

で、観光だったか。」


「はい、どこかサッと回れるところはありませんか?」


「そうだな……職人街とか面白いんじゃないか?」


「ああ、そこがありましたね。確かに面白いかもしれませんね。

行ってみますか?」


そう言った母に誰も異論は無かった。




広場から北西に伸びるレンガ通りを進んで数ミニ

そこで左の脇道に入ってさらに数ミニ進むと、

レンガ造りの建物が並ぶ通りに出た。

煙突の付いている建物も多く、

カンカンカンとどこからか

金属を打ち付けるような音が聞こえてくる。


そんな通りを歩いて行くと、

時折、武具店などという大きなくくりでは無く、

刀剣屋や、槍屋、鎧屋などの専門店が見えてくる。


へぇ~ここでは武器の種類ごとに店を出しているのか。

何でだろう?


母に聞くと、


「まず、この職人街は新米職人の技術習得も見込まれているのよ。

それで、ここのお店はこの職人街の共同店舗になっていて、

武器や防具など種類ごとに売ることで、

一つにつき多くの人の作品を置くことが出来るのよ。

そうすれば、まだ有名ではない人の作品も

ここに来た人の目に留まる可能性が増えて、

実力のある人が評価されるようになるのよ。」


なるほど、そういう目的なのか。

それに、買い手側も自分の欲しい種類の物を、

簡単にたくさん見比べることが出来るということだろう。


しばらく歩くと、何か見つけたのか、

ミリアちゃんがトテトテトテと走っていった。

そして、一つの店の前で止まる。


僕たちも追いついて見ると、

そこはアクセサリーのお店であった。


金属でできた花形のブローチ、木彫りの腕輪、

宝石を使った指輪もある。

そのなかで、ミリアちゃんが見つめているのは

金属で出来た輪に薄くカットした水晶のついた

シンプルだが繊細なイヤリングであった。


「やあ、お嬢さん。それが気に入ったのかい?」


そう言う店主の声も耳に入っていないようである。

そのため、ミレナさんがフォローに入る。


「ごめんなさいね、店主さん。

うちの子、集中すると周りが見えなくなっちゃうの。」


「それぐらいの子は好奇心旺盛ですしね。

それで、一応解説すると、そのイヤリングは

うちの期待の新人二人の合作なんですよ。」


「そうなんですか。」


「ええ、宝石職人と鍛冶職人なんですけどね。

どうです?」


「うーん、うちの子まだ小さいですし、

私たちもあまり使わないからねー。」


「そうですか、残念。そちらのご婦人はどうです?」


「うちも使わないかしらね。」


「そうですか。」


「もし機会があったらまた来ますね。」


「はい、よろしくお願いします。」


そう言って店を離れるのであった。


通りを歩いてちらりといろんな店を覗いていくと、

面白い装飾のついた剣とか

まさかのトンファーなどがあったが、

そろそろ父との合流の時間ということで、

僕たちは職人街を離れて広場に歩いて行くのであった。

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