浄化された戦争

浄化された戦争


彼女は私の撃った弾丸を

間違うことはないだろう

たとえそれが

何千何万と降り注いだ爆弾にまみれようとも

五本の指の一本たりとも進入の許されない

地雷の野原にあろうとも

必ず見分けることができるだろう

それは彼女に課せられた義務なのだから


彼女は銃声に乗って踊るだろう

声高に笑って叫び散らすだろう

愛しているわ!

心の奥底からあなたを愛しているわ!


それは狂気だ

彼女と私にかけられた呪いだ

悪魔にその身を売り渡した者の

喜びに満ちた天への叫びだ


なくなってしまうものは自らの手で破壊した

残ったものは彼女だけだった

彼女は彼女の存在を、そのすべてを駆逐した

在るべきものはそこにはない

銃声も

安らぎも

死も


絶望と遺伝子だけが

生命への義務に奮い立つ


彼女は憎しみに燃え上がった目で

私を凝視するだろう


受け継がれた血は浄化される

握りつぶされて捨てられた情報の鼓動は

決められた速さで命の誕生を告げる


いつか再び

逢える日が来るだろうか

憎しみも喜びも知らない身体で

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る