魔族侵攻編
第24話 旅人なんです
一本道を歩いて向かうは見知らぬ土地。
魔族と戦争中というこの世界がどうなっているのか、この目で確かめに行こう。
きっと過ごしやすい場所が見つかるはずだ。
「って思うんだけど、どうよ」
「……何でもいいよ」
何だよ冷めてんなぁ。
もっと懐いてた気がするんだけど、これがいわゆる倦怠期ってやつですか。
「…………ミナトと一緒なら」
……人の心を
これは将来小悪魔になりますぞ!
「嬉しいこといってくれるじゃん。でもぶっちゃけて聞くけどさ、シーラは元々魔族なんだろ? それが人間に捕まって酷い目に遭って。人間のことを恨んでたりしないのか?」
シーラは少し考えるようにしてウーンと唸ったあと、少し難しい顔をしながら答えた。
「そもそもどうして森の中にいたのかよく分かんない。どうしていいか分からなくてフラフラしてたら、あの人達に捕まって連れてこられた。酷いこととかいっぱいされたけど、ミナトは酷い事しないから好き」
質問した内容と返ってきた答えが微妙に違うけど、家族を殺されて連れてこられたってわけでも、親に捨てられたってわけでもなくて、1人でフラついていたところを捕らえられたのか。
一体どういう理由で森の中なんて1人でいたんだろうか。
もう少し打ち解けることができたら深く聞いてみることにしよう。
「確かシーラは魔法が得意な魔族なんだってな」
「知らない」
「使えないのか?」
「使い方分からないもん」
「ええ……。今後自分の身を守る上でも自衛の手段ってのは必要になると思うぜ。魔法ぐらいは使えるようになったほうがいい……って、そういう俺は雷魔法しか使えないんだけどな」
「そうなの? なんで?」
「さぁ? 俺だって分かんねーよ。もっと水とか炎とか使ってみたいんだけどな」
「じゃあ私がミナトの代わりに魔法を使えるようになる」
「お、いいじゃん。そしたら俺が前衛でシーラが後衛って形でパーティ組めるな」
「うん。だから魔法教えて」
はい無理難題。
だから俺自身、魔法の使い方が分からんのだって。
ガルムから教わったのも、ほとんど感覚的な話で論理的に説明されたわけじゃないから、誰かに教えることなんて出来ないし。
「…………こういうのは誰かに教わるんじゃなくて、自分で出来るようになるのが一番いいんだぜ?」
「……そういうものなの?」
「そういうものなの!」
「ふーん」
シーラが疑いの目を向けてくる。
さすがに適当なことを言いすぎたか。
「とにかくだ。これから先、何が起こるか分からないから、身を守るすべは持っておくべきって話だ。そのうち魔法に詳しい人がいたら、その人に聞こうぜ」
「うん」
なんとか言葉を
相変わらずだだっ広いところで心が和むなぁ。
「………………なんだアレ」
俺がいるところから随分離れた所になるが、なにか得体の知れない生き物の大群がシャンドラ王国の方向に進んでいるのが見えた。
狼みたいだったり、鳥みたいだったり、蜂みたいだったり。
その中でも
遠すぎてよく分からないが、アレに似たのをつい最近見たことがある気がする。
なんだったか…………。
まぁ何はともあれ、関わらないのが一番だよな。
「シーラ、行こう」
「うん」
大群がこちらに気付かないうちに、俺達はそそくさとその場を離れた。
さらに一本道をひたすら歩いていくと、俺が抜けてきた森を見つけた。
この森の何処かに、1ヶ月過ごした洞窟があるはずだ。
その洞窟に行けば結晶石を山ほど採って、金に困らない生活を送ることができると思うが、見つけるまで木ノ実や昆虫食で過ごすなんてキモい生活は送りたくないから、無難に次の町を目指すことにする。
と、ここでふと今後の一つのすべき目標のようなものを思いついた。
「そうだよ。この洞窟以外にもヴィルモールが作った洞窟が他に4つあるって話じゃん。そこに行って俺のこの武器を強化するって目標があるじゃんか」
そういやこの武器にもそろそろ名前付けないとな。
「洞窟?」
「そうだよダンジョンだよ。次の町に行ったら、そこら辺を調べてダンジョン攻略しようぜ!」
「えー…………怖そう」
「怖くなんかないって。ちょっとキモい虫がいるのと、あとは………………」
言ってて思い出した。
そういやダンジョン内は魔物以外にも、ガルムが苦戦するような魔人がいるんだった。
シーラなんか連れていくことできないし、俺も1人で入って生きて帰って来れる保障がない。
なによりぼっちは寂しい。
俺がウサギだったら死んでる。
やっぱりこれは却下の方向にするか…………。
「やっぱり何でもない」
「…………変なの」
そろそろ日が暮れてきたので、俺達は仕方なしに野宿をすることした。
食べるものが何もないのは少々ひもじいが、時たま通る馬車に乗った商人が、俺達の姿を見て恵んでくれることに期待しよう。
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