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意識を取り戻すと、僕は教会の中にいた。
耳を刺激しない落ち着いた音楽が、どこからともなく聞こえてくる。
格好はスーツから、灰色の胸当てにマントの姿に変じており、腰には刀を差している。
外に出ると、空の高いところで、大きな赤い鳥が飛んでいるのが見える。
精霊だ。
いま僕がいる、フェニクアという世界の創造主だそうだ。
精霊が、人間界へ遊びに行った際に姿を見られたのが、フェニックス、フマ、
僕が人間界から転移して来たのは、クンガという町である。
規模は、RPGに出てくる小さな町といった感じだ。
町の役場に行き、町長にあいさつをしたが、町長と言っても、部署違いの
僕が与えられていた自分の席に坐ると、フェニフびとの女の子が、微笑みながらお茶を出してくれた。
フェニフびとは、切尾商会がフェニクアを開拓するのを助けるため、精霊が人間を模して生み出した種族であった。
皆、赤い髪と鳥のような目つきをしている。
精霊により文字を解することや闘うことを禁じられており、任せられる作業は限られていたが、フェニクアに転移できる適格性をもった人間が少ないので、開拓には欠かせない存在であった。
ちなみにフェニフびとは精霊から派遣された派遣社員であり、派遣契約以外の仕事をさせると大問題になる。
労災などはもってのほかである。
派遣社員なので当然、フェニフびとには時間給が支払われる。
このコスト管理が、市長や町長など管理者の腕の見せ所だが、まあ、たいていの方は苦労しているようだ。
僕はお茶を飲みながら、フェニクアの地図を見た。
切尾商会の最大の拠点であるサマルを起点に、北方へ扇状に市町が広がっている。
ちなみにサマルは、切尾の一族の者が
精霊の依頼により、切尾商会はフェニクアの開拓を請け負うことになったのだが、人間界からフェニクアに物資は転移できないので、先人たちは、何もないところから世界の開拓をはじめたと聞いている。
彼らの苦労を想像するたびに、自分は参加してなくて良かったと、心から思う。
精霊によってサマルと名づけられた都から、切尾商会の社員たちは、北方にむかって開拓を進めている。
南方に進まなかった理由は簡単で、サマルの南側に山脈が広がっているためであった。
その山脈の向こうにフェニフびとの国があるらしいが、本当かどうかはわからない。
いま僕がいるクンガは、サマルから見て最北東に位置する町だ。
このクンガの先に新たな拠点を作ることになり、僕はその立地を検討する指示を受けていた。
そのため、獣皮に描かれた地図や集めた資料と
町や街道の建設にかかるコスト、水源やモンスターの生息地からの距離など、メリット・デメリットをまとめて、自分の案を示さなければならない。
道の舗装や転移装置の用意は整備部が行うので、彼らを納得させる計画書を出さなければならないので気が重い。
ちなみに、今、フェニクアには四十ほどの町がある。
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