日本と猫と自由研究
桜雪
第1話 資金打ち切り
「研究資金を打ち切らせてもらいます…」
「はい?」
「本日中に、大学から私物を引き揚げ研究室を明け渡してください、なお、これまでの研究資料は契約通りに当社に帰依しますので…云々…」
途中からは聞いていられなかった。
3年間、何の成果も無いと言えば嘘でもない。
わざわざ、フランスまで来て…日本へ叩き帰されるとは…。
とある食品メーカーから、フリーズドライでフランス料理を提供したいと相談を請けて…日本の地方大学で腐っていたアタシは…
「もちろん可能ですよ、料理については素人ですがフリーズドライへの理解は充分です、アタシが適任です」
根拠のない自信だけで3年間の研究資金及び生活費を出資していただくことになった。
大学をアッサリ辞めて、3年後には成果と一緒に帰国、そのまま会社に就職となっていたのだ…いたはずだったのだ。
研究所はフランスの大学を間借り、会社の人間、共同研究者・料理人と共に、フランスへ…毎日のようにフランス料理のフルコースを食べ、フリーズドライして…食べ…設備だけは一丁前に整っていくものの、成果は薄かった。
知識はあった…自信もなんとなくあった…足りなかったものはフランス料理の知識と味覚ではなかったのではなかろうか…。
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