衝撃のエンド

甲乙 丙

「春に新しい機種が登場!」

「ペン型端末『Runia-ss4』!」

「携帯端末は新時代へ。未来はルニアにある!」


 ショッピングモールにある大型ビジョンからCMが流れる。

 流行りのアイドルにアップテンポの曲。桜をイメージしているのかピンクの光がビカビカと乱れて目が痛い。モールに集まった買い物客の顔も画面に合わせて桃色に反射していてなんだか滑稽に見える。

 ビジョンの下に新端末の特設コーナーが設けられていて、ピンクのハイヒールに赤いミニスカート、艶光りしているジャケットといった様相のキャンペーンガールに案内される人が群がっていた。

 休日だからか、それとも新端末を求める人が多いからか、モールは混雑している。


 二荒徹にあらとおるはエントランスホールにあるベンチに座り、ベビーカーのハンドルに頭を擦り付けて深く息を吐いた。妻と息子の三人でモールに足を運んだのは良いが、既に体は疲れ切っていた。

「まだか……遅いなあ。だから昼に歩いて買い物なんてしたくなかったんだ」

 食事会の時に着る似合いの服を探してくると言って夫と息子を置いて行った妻を、恨めしく思い独りごちた。

 普段はのんびりとした性格の妻だったが、買い物になると人が変わる。まるで甘い汁に集まる虫のように、それにしか目が向かなくなるのだ。

 ふとベビーカーを覗き込む。もうすぐ一歳になる二荒家の一人息子、まもるはその中で気持ちよさそうに眠っていた。

 徹はその様子が無性に羨ましくなって息子の頬を突っついた。小さな唇に泡がプクリと浮いていてそれをハンドタオルでそっと拭いた。


 ビジョンの下から大きな歓声が聞こえた。理由はわからないが「ルニア」の特設コーナーがなにやら盛り上がっていて、ホールに集まる他の買い物客も興味の視線を向けてパチパチと拍手をしている。

 コーナーの中央は一段高くなっているのか、人の塊の向こうに派手な姿のキャンペーンガールが見えた。彼女のジェスチャーとコールに合わせて拍手の音が大きくなったり、小さくなったりする。似合わないイメージだが、まるで観客の扱いに熟練したTV司会者みたいだと、徹は思った。


 彼女に促される形で、観客の中から一人、壇上に進み出てきた。どうやらこの騒ぎの元は壇上に上がった人物にあるらしい。キャンペーンガールに合図を出された観客はまた一段と歓声と拍手を大きくした。

 徹は壇上に進み出てきた人物を見て、度肝を抜かれた。思わず口を丸に開けてアッと叫んだ。

 それはどう見ても、妻のミチルだった。照れた様子でペコペコしているミチルに嵐のような拍手が送られていた。


 ◇


 ピンポンパンポーン。

 突然ですいません。作者です。

 この後、妻ミチルに呆れた徹との会話劇、新端末「Runia」の性能とそれにまつわるニアミス事件なんてものも考えてるのですが、続きを書くか迷っています。


 と、いいますのも。

 この作品は自主企画「無色な言葉『ルニア』を使って短編を書こう」参加作品であり、これまで作中に登場させた総「ルニア」数は24(◇の前までね)。

 お気づきにならなかったならともかく、気付いた方からすればこの後のルニア責めは少々しつこいかな、という気がしております。目的は「ルニア」をいかに隠して使うか、であり、種がわかっているショーをだらだら続けても仕方がないかな、と。

 とはいえ、尻切れ蜻蛉ってのもな、と続きをなんとかフルに頭を絞って捻り出そうとは思っているんですが、んんん。どうかなあ。

 とりあえずこれにて一旦完結とさせて下さい。エヘヘ。


 ババーン! 打ち切りエンド!(総「ルニア」数……33)

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