第106話 出会い(8)

 また僕自身が脳裏で思うから大変に不思議でならない。


 だってさ? 僕は、自害、己の意思で首吊りをして他界した筈の男(ひと)なのに。僕を膝枕した状態で、他所へと向き、『ペッペ』と吐いている金髪碧眼の、和式ではない。洋式の天女さまの、僕への渾身的な介護のお陰でね。僕はちゃんと息を吹き返した。というか? 真面に息ができるようになる。


「はぁ~、はぁ~、はぁ~」とね。言葉を漏らすことが可能になった。


 だから僕は、後ろを振り向き、嘔吐を吐き出している金髪の天女さま。と、いうよりも? 洋物だから女神さまと呼んだ方がよいのかな?



 まあ、そんな神々しく、麗しい女性(お方)へと僕は、


「あ、ありがとうございます。本当にすいません……」と。


 お礼と謝罪をおこなったのだ。


 本当に有り難いと言うか? 別に助けてくれなくてもよかったのにと、己の心の奥底……。死ぬ気でいた僕だから、内心思いながら告げたのだ。



 ◇◇◇◇◇

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