赤ワインと林檎のレアチーズケーキ

仲村 歩

第1話 鉛色

鉛色の空が広がっていた。

眼下には街が広がり、その先には蒼い海がどこまでも続いている。

「ここはどこだ?」

見渡してもここがどこなのか判らなかった。

冷たい北風が背中から吹き抜けていく。

ザワザワと背の高い葦のような草が生い茂り。

真綿で出来たような、亜麻色と言えば良いのだろうか。

背の高い草から穂が出ていて北風に揺れている。

その先には田んぼだろうか、畦で囲まれていて水が溜まっている。

恐らく稲を刈った後に水が溜まったのだろう。


眼下の畑と田の間の細い道で数人の女の子が言い争っている。

どこかの高校の生徒なのだろう一人は道にしゃがみ込み、その周りで数人が騒いでいる。

騒いでいるというより、一方的にしゃがみ込んでいる女の子に罵声を浴びせて鞄の中の物を道にぶちまけていた。

「俺には関係ない……」

そう思った瞬間、どこからなんとも言えない様な香りがする。

思わず喉が鳴った。

自分でもはっとして我に返る、未だにこの感覚が残っているのかと。

振り返り、この高台の公園まで来たときの車に乗り込み車を出した。

なぜか彼女の事が気になり始めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る