第71話 加速する世界

~魔法使い・ティーエの視点~


呪術研究会・1日目


 呪術研究会への登録が正式に終わりました。そして、私は緊張して、呪術研究会の扉を開きました。


 私は新魔術研究室と古代魔術研究室にも所属しているので、夕方からの参加になります。


 すでに、そこには変態悪魔とクロエさんという一般の生徒とドロニアさんという特別クラスの生徒がいました。どうやら、噂に聞いた通り変態悪魔以外は女性ばかりのようです。


「わ、私はクロエです。よ、よろしくお願いします。」


「私は、ドロニア。」


「私はティーエです。これから、よろしくお願いします。」

私たちは自己紹介をしました。


「ア、アギラさんが、か、勧誘したんですか?す、すごいです。」


「まー、そんなところかな。」

どうやら、クロエさんは変態悪魔の恐怖で上手く喋れないようですね。

しかし、その気持ちはよく分かります。この天才魔法使いである私でさえ、変態悪魔と話すとき、少しどもってしまうのですから。一般の生徒であるクロエさんでは仕方のない事です。


 それに、クロエさんは少し暗い印象を受けます。この変態悪魔に日々虐げられて、こんな表情になってしまったのでしょう。この学園にこんな無法地帯があったとは・・・


 そして、ドロニアさんはあまりの恐怖で、ほとんど言葉を喋れないでいるようです。


 最初の自己紹介以外、ずっと喋っていません。

 この部屋で、毎日何が行われているのか。この2人を見ていれば想像がつきます。この2人は精神がやられるほどの凌辱を繰り返しされているのでしょう。

ああ、その想像するのも恥ずかしいような行為をこれから私も強制される事になるのですね・・・


 ・・・いえ、違います。しっかりするのです。私は先生として、この2人を変態悪魔から救わなければならないのです。それには、私が率先して、この変態悪魔の要求に答え続ければいいのです。そうすれば、この2人の負担も減る事でしょう。


 私1人で満足してくれるでしょうか。これから行われるであろう行為を想像して、私の下腹部が少し濡れてくるのを感じます・・・そ、そんな、失禁するはずがありません。これは何か違うものです。これから、行われる変態悪魔の痴態を考えれば、考えるほど溢れてきてしまいます。


 思考が鈍り、3人の会話が頭に入ってきません。


こ、これは、変態悪魔の幻惑魔法にかかってしまったのではないでしょうか。

私が幻惑魔法にかかっている間に一日目の話し合いが終わったようです。

今日は何事もなく過ぎましたが、次は何をされてしまうのか。早く、ジーク達と連絡をつけないといけません。手紙を出したので、そろそろ返事が返ってくることでしょう。



呪術研究会・2日目


 初日から、3日経った今日、私は重い足取りで、呪術研究会の門をくぐりました。1つの研究室に週に最低2日は出席しないと研究員として認めてもらえないのです。


 私は今日こそ襲われてしまう覚悟を決めて、この場所へと足を運びました。

3人は暗い表情でした。沈黙が漂っています。


こ、これは、これから何かが始まる前兆ではないでしょうか。


そうです。私が読んだ本にも、そういう事が始まる前にはムードが変わると書いてありました。私はあれから、2人の身代わりとなって、私1人で満足してもらえるように、本を読んで研究してきたのです。


私は、変態悪魔が行動に移るその時を覚悟して待ちました。

そうしている間に、私はまたもや幻惑魔法にかかってしまったようです。下腹部から染み出た液体のようなもので、パンツが湿っていくのを感じます。


くぅっ。この魔法に抵抗するすべはないのでしょうか。私の読んだ本には全く書かれていませんでした。


しかし、時間が経っても、変態悪魔は何の行動にも出ませんでした。

時折、ため息をついていました。


こ、これは、確か、本に書かれていたような気がします。

確か、じらしプレイというものだった気がします。高度なテクニックが必要だと書かれていたはずです。


それを使いこなすとは、変態悪魔ここに極まれりですね。

手紙の返事はまだなのですか・・・早くしないと、私は洗脳されてしまうかもしれません。



呪術研究会・3日目


 私は重要な事に気づいてしまったのです。どうやら私は勘違いしていたのかもしれません。


 この変態悪魔は私の実力を知らないはずです。私なんか足元にも及ばないのは分かっています。しかし、私は国王から大魔法使いの称号を頂いたのです。私の実力を知らない変態悪魔はうかつに手を出せないでいるのではないでしょうか。


 そうすれば、あのため息の理由が分かります。私がいると、2人を凌辱する事ができない。だからため息をついていたのですね。


 私はクロエさんとドロニアさんに心の中でお詫びしました。私が助かりたいばかりに、最低限の2日しか参加していませんでしたが、私の来ていない日に2人はどんな事をされていたのか。考えるだけでも恐ろしい事です。


 本来守らなければならないはずの私が恐怖で逃亡を繰り返していたのです。私は先生失格です。でも大丈夫です。これからは、毎日でも訪れ、2人を守ることにします。


 そして、今日新しく研究員が増えたようです。確か特別クラスの生徒のはずです。何故、自分からこの呪術研究会に足を踏み入れるのですか。


 しかし、変態悪魔が喜んでいます。追い返したりしたのがバレればどんな事をされてしまうのか。場合によってはメガラニカ王国が滅ばされてしまう事さえ考えられるのです。私は新しく入った者に何も言う事はしませんでした。



呪術研究会・4日目


 手紙が帰ってきました。ジークは新婚旅行に出かけていて、不在との事でした。

 そして、マヤカは修道院をやめて、新しい宗教を自ら立ち上げ、その布教活動のために旅に出ているためいないとの事です。


 ガラフは友人と新しく鍛冶工房を作って、忙しいとの旨が手紙に書かれていました。そして、私の勘違いじゃないのかとも書かれていました。もし、どうしても気になるなら工房に連れて来てくれれば、確認するという事でした。


 どうやら、私の言っている事をまるで信じていないようです。鍛冶工房に連れて行く等という難易度の高い事を私ができるでしょうか。いえ、やらなければならないのです。

アギラが変態悪魔かどうか、それを確認しないといけません。


「あ、あの、ア、アギラ君は、か、鍛冶に興味があったり、し、しますか?」


「鍛冶ですか・・・少しありますね。」

予期していなかった反応です。


「で、では、私の知り合いの鍛冶工房に、い、行ってみる気はありませんか?」


「そうですね。研究員も5人揃ったことですし、ちょっと行ってみるのも面白いですね。」

私は、地図と工房の名を書いた紙を渡しました。一緒に行くなんて恐ろしいことはできるはずがありません。


それを受け取った変態悪魔は少し驚いた表情をしている気がしましたが、気のせいでしょうか。


その紙には、工房の名前と地図が書いてあるだけなんですが・・・


ダン&ガラフ工房 それが、ガラフが新しく設立した鍛冶工房だそうです。

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