第49話 調査兵団
~調査兵団・ザックの視点~
私は2人の部下を連れて港町へと調査に来ていた。
この調査には自ら志願した。私は国王と共に港町から東にあるカイエン王国に来ていた。
私は特殊な能力を持っていたので、重要な会談では国王と共に行動をしていた。
その特殊能力は嘘を見破る魔眼であった。私は3年前にこの能力を見込まれ、メガラニカ王国の調査兵団へと抜擢されることになった。奇しくも3年前の初めての調査もこの港町での事だった。
その時の調査内容は奴隷の失われた足がいつの間にか治っていたという噂の真偽だった。
私は、この噂から岬にある一件の屋敷に辿りついた。そこにいるメイドこそが、その問題の奴隷であることが質問から分かった。
『奇跡の水』を飲めば足が再生したということ、そして、その薬はもうないという事が私の力で分かった。その出所を聞いたが、聞き出すことが難しかった。ただ、北の大陸のさらに北にある洞窟にあることが分かった。何故この目の前にいるメイドが北の大陸の北の果てを知っているのかは疑問だったが、嘘を言ってないことだけは確かだった。
国王に進言すると、ただちに北の大陸へ行くものを募ることにした。しかし、北の大陸へは誰も行きたがるものはいなかった。北の大陸は危険な大陸とされていた。700年くらい前に北の大陸へと渡ったキリ王国の軍が全て消滅し、その後キリ王国が衰退して、地図上から姿を消したのは誰もが知る歴史である。そして、情報自体も怪しいものだったからだ。
そして、国王は勇者ジークに頼むことにした。ジークは『奇跡の水』を必要としているカトリーヌと交際していたから、断らないだろうと考えたのだ。
そして、ジークは私の友でもあった。ジークは私の事を信頼してくれいたし、私も嘘偽りのないジークを信用していた。
この3年間ジークの事は常に心配していた。
そして今回の報告が王国に戻る王に届けられた時、私がその調査に志願を申し入れたのだ。
その報告とは、海岸に3年前に出発した船が戻ってきているという報告だった。そして、その船にはもう誰も乗っておらず、ジーク達一行の姿はどこにも見当たらないというものだった。
瀕死で帰りつき、港町で何かあったのではと思うと居ても立ってもいられなかった。
私は港町に着くと、まず冒険者ギルドへ行き、受付に向かった。
「最近この辺りで変わったことはないか?」
「最近ですか……そうですね。……一週間くらい前にこの近くでエルフに襲われたという報告くらいですかね。」
エルフは基本目立つ事を嫌うはずだから、疑わしかったが、嘘は言ってなかった。
「襲われたのは誰だ?」
「たしか……バロワ商会の人達ですね。」
バロワ商会と聞いて私はきな臭さを感じ取った。バロワ商会の者達には城で何人か会ったことがあるが、その発言は嘘ばかりであった。
調査兵団の団長はどうやら、嘘とわかっていながら、色々な事を見過ごしているようだった。そして、その状況を副団長が苦々しく思っているのも知っていた。
私は、ひとまずその襲われたという者達に会うことにした。
私は全部で9人に別々に聞き取りをしていった。
「エ、エルフだって?それなら俺たちが森で捕まえたんだ。冒険者ギルドの依頼にあったからな。」
本当だった。
「エルフが先に攻撃してきたんですよ。だから、危険がないように捕まえて無力化しようとギルドに依頼したんです。」
嘘だった。
「エルフのせいで、見てください、この腕、全く動きませんよ。」
嘘だった。
「ひぃー、俺はもう関わりたくないんです。ほっといてください。」
本当だった。
「問題はエルフじゃない。後から来た悪魔のような男だ。あいつはやばい。」
本当だった。
「エルフを俺たちが先に襲いませんよ。」
嘘だった。
「エルフ、ナニそれ、オイシイの?」
精神崩壊していた。
「俺たちが奴隷商売をやってるわけないだろ!」
嘘だった。
「一瞬だ。あの男の動きは何も見えなかった。あいつ、何者なんだ……」
本当だった。
私はギルドに併設されている酒場のテーブルに腰掛け情報を整理した。
私は、点と点を1つの線につなげるために、深く自分の世界に入り考え込んだ。
エルフに先に攻撃を仕掛けたのはバロワ商会で間違いないだろう。そして、その目的は捕まえて奴隷とするためだ。そして、もう一人エルフには仲間がいるようだ。それは悪魔のような男で、精神を刈り取るほどの実力を持つということか。しかし、この件がジーク達一行と関係しているかどうかまでは分からない。しかし、ギルドにこの依頼の真相を伝えなければならないと思った。
隣の
隣の集団は席を立ち、帰ろうとしているところだった。
私はその帰ろうとしている集団を見て、目を見開いた。
~隣の席・少し前の会話~
「エルフの里から船を出してもらえて本当に良かったな。」
「本当じゃ。そうでなければ、ワシが船を作っておったんじゃがな。」
「いや、何年かかってたんですか?そんなことしたら、私の大事な成長期が終わってしまうじゃないですか。」
「あなた・・・まだ諦めてなかったのね。」
「まだ大丈夫じゃ。ワシも去年から1cmくらいは身長が伸びた気がするぞ。」
「そんなに気にしなくても、いい人が見つかるはずだ。」
「いいですよね。帰れば王女との結婚が待ってる人は。やっぱり、心に余裕がある人は言うことが違いますね。私にはもう名声しかありませんよ。絶対に大魔導士と呼ばれるようになってみせますよ。」
「あら、こうして無事帰ってこれたんだから、それは叶うんじゃないかしら。きっと富と名誉は約束されるんじゃないかしらね。」
「ともかく、こうして『奇跡の水』を持って帰れたのはみんなのおかげだ、ありがとう。」
「もし良かったら、余った一本を私に頂けないかしら。報酬は少しその分少なくてもいいので。」
「俺はカトリーヌの分の一本あればいいから構わないが・・・」
「私も全然構いませんよ。というか、あの悪魔達の薬は怪しいですからね。必要としないならそれにこした事はないですよ。」
「ワシも構わんぞ。この旅で一番多くワシが使ってしまったからな。ガハハッ・・・それにしても、誰か治したい人でもいるのか?」
「うふふ。ちょっと考えていることがありまして・・・」
「よし、じゃあそろそろ王都に向かおうか。」
「そうですね。」「そうじゃな。」「そうね。」
4人の集団は立ち上がった。
その4人の集団が帰ろうとすると、後ろから声がかかった。
「ジーク、ジークじゃないか。」
~調査兵団・ザックの視点~
隣の席の集団はジークのパーティーだった。
私はジークと抱き合い、再会を喜んだ。
私は4人を馬車に乗せて王都に送ることにした。
車中でいろいろ話を聞いた。その話は嘘のような話ばかりであったが、全て真実だった。
私は何かやらなければならない事があった気がしたが、ジークに出会えた喜びと旅の話に夢中になって忘れてしまった・・・
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