第25話 〇〇一行 side-B
学校は5年目に突入した。クラス替えで、誰も知るものがいないクラスになった。イグニスもウェンディーもエレオノールもいなかった。4人で昼ご飯を食べるのは相変わらずだった。
ただ、クラスで孤立していたかたいうとそうではない。クラスの1人が俺に薬のことでお礼を言ってくれた。身内が呪いにやられていて、助かったらしい。俺は実際大したことはしてなかったので、謙遜していると、それがまた気に入られたらしい。そこから、クラスになじみ、イグニスたちがいなくても普通の学生生活が送れるようになったのだ。
そして、俺は今後の目的を師匠の呪いを解く手がかりを求めて、世界を旅しようと考えていた。そして、魔王の情報を少しでも集めようと思った。師匠にはルーラの事や修行をつけてくれたことなど、感謝してもしきれないほどだった。ちょっとでも助けになれないかと考えた結果だった。そして、魔王の情報を探れれば、俺を生かし、育ててくれたこの国に恩返しできる気がしたからだ。
それに、師匠から話を聞いて人間の世界に興味がでてきたという事もある。
俺はそういった事を、アギリスとルーラに相談したら。寂しがってくれたが、了承してくれた。
夏休みに入って、俺は大きな樽を持ち、師匠のところへ訪れた。俺は密かに御伽話などに出てきた不思議な水の正体にあたりをつけていた。それが、この大きな樽であった。
「おお、もしかしてそれは酒か!」
「はい、最高級品になります。」
この酒の件は、ルーラに相談していた。ルーラは御伽噺や神話に詳しかったので、俺の話に同意してくれたのだ。そして、それを聞いたアギリスが手配してくれたらしい。なんでも皇帝の耳にまで入って、呪いの御礼にと頂いてきたらしい。
「おお、そうか。どれ・・・。」
人の姿をしてコップに掬い一気に飲み干した
「うまい。よく我が酒が好きだとわかったのぅ。無礼講じゃ、お主も飲んでみろ。」
さすがに10歳ではと思ったが、俺はかなり体型がしっかりしていた。身長は前の世界の最後と同じくらい、そして、筋肉はそれ以上あったため、かなりがっしりしていた。
だから、お酒を飲んでも大丈夫かと思った。前の世界でも、中学の時にビールや酎ハイくらいは飲んだ事があったからだ。それに、師匠のすすめは断れまい・・・
一口飲むと、口当たりが良く、まろやかな味が舌いっぱいに広がった。そして、鼻腔を抜ける甘い香りが俺の脳を刺激した。そして、体温が上がり、気分がよくなってきた。
そこで、俺は考えていることを師匠に語った。
「私は学校を卒業したら、人のいる南の大陸へ行こうと思います。そして、師匠の呪いについて微力ながら、治す手掛かりを掴んで来ようと思います。なんなら、魔王を見つけたら倒してきますよ。」
酒を飲んでるからか、気が大きくなって変なことを口走っていた。
「フハハハハハ、言うではないか。我は竜族を守るためにここを動けんからして、お主が外で呪いを調べてくれるのは我も助かるわ。ヒック。ただ、魔王を見つけたら刺激するのはやめておけ。もし見つけることができれば情報だけでも伝えてくれればよい。ヒック。あー、そういえば・・・思い出したんじゃが・・人の世界に行くのはちょっと問題があったのぅ。杞憂かもしれんが。ヒック。」
早くも酔っぱらってきていた。あんまり、酒に強くないのか・・・?それよりも、俺が人の世界に行くのに何か問題があるのだろうか・・
「何が問題なんですか?」
「まー、後1年半もあれば何とかなることじゃから、今は気にするな。今はこの酒を楽しもうぞ。」
何とかなるのであれば、いいか。酒が入ってるせいか楽観的な思考になっていた。
「それよりじゃ。昔勇者のメンバーと一緒にやったゲームがあるんじゃが、やらんか?」
「いいですよ。どんなのですか?」
師匠がニヤリと笑っていた気がした。
俺はそのゲームの内容を聞いた。手の形を、握った形、2本の指を突き出した形、5本の指を話して広げた形にして勝敗を決め、負けた方が服を脱いでいく・・・・て野球拳かよ。
どうやら勇者のメンバーとやって盛り上がっていたらしい。
酔っていたし、なんとかなるだろうと思ってゲームを開始した。
・・・なんとかならなかった。
いつの間にか全部負けて。パンツ一丁になってしまっていた。
「師匠、強すぎじゃないですか。」
「グワーッハッハッハ。弱い、弱すぎるわ。」
『あかん、酔っぱらいすぎてる。』
「じゃあ、次の勝負じゃ。始めるぞ。」
「ちょっ。まだやるんですか?」
「当り前じゃ。腰にまだ脱ぐものがあるじゃろ。」
身長も伸び、体も逞しくなっていたが、あそこに毛がまだ生えていなかった。それを見られるのは、何か自尊心が崩壊しそうだった。
俺は恥ずかしさを押し殺すために、酒をまた一杯飲んだ。
『勝てばいいんだ。勝てば。』
あっさり負けた。あいこにすらならなかった。何か仕掛けが・・・
師匠は笑い転げていた。俺は酔いの力を借りてパンツを脱いだ。
「おー、立派なものをもっておるのに、まだ生えてはおらんではないか。グワーッハッハッハ。」
『気にしてることを・・・』
師匠は笑いすぎたためか、酔いがまわったせいか、人化の魔法が解けて黒竜の姿に戻っていた。
「久しぶりにこんなに笑ったわ。昔が懐かしいのぅ。」
師匠は寂しかったのかもしれない。こんな洞窟で1300年近くいたんだから・・・
そんなことを考えていたら、この洞窟の奥にある空間に入ってくる足音が聞こえた。
空間の入り口を見ると人間の姿をした4人組が現れた。尻尾がなかったが、師匠の友達か?でも、ここは竜人は入れないはずでは・・・
「師匠お知合いですか?」
「いや、知らん奴らじゃ。」
そんな会話をしていると、先頭の青い鎧を着た男の姿の者が何かを叫んでいた。
「⊿§℀ΩλΛ✇§?! ◎%#λ§θΩΘΩ。」
全く何を言っているのか分からなかった。
俺は友好を示すために、手を振って
「何か御用ですかー。」
そう叫んだ。
すると、その男は剣を抜き、何かいいながら師匠に切りかかった。
「▽℀、◎Ω§λ×ΑΓ!」
相変わらず何を言ってるか分からなかった。師匠は酔いつぶれて微動だにしていなかった。俺は間に入って切り刃の部分ではなく平らになっている剣の腹めがけて手刀を打ち込んだ。
『
身体強化された手刀は、剣を真っ二つに切り裂いた。
その青い鎧を着た男は、驚愕の顔を浮かべて腰に差していた、もう一本の剣に手をかけた。
それを見て俺は、手をかけた反対側の腰当りに隙ができているのを見逃さなかった。そこで、そこに左のミドルキックをお見舞いした。鎧は蹴りが当たった部分が破壊され、全体にひびが入った。そして、その男は蹴りで吹っ飛び、後方の壁へと叩きつけられた。そこに、1人の女性がかけより、回復魔法をかけているようだった。
その時、鎧を着た男の少し後ろで待機していたもう1人の女の子が何か呟いていた。
「○×♩/-@&!▽ ▲)」)(¥//、Ω℀ Πλθ?・($」
すると、杖から炎が飛び出して、俺の方に向かってきた。
本来、火の魔法には水の魔法で対処しなければならなかったが、酔っぱらっていたせいか、氷の魔法を発動させてしまった。本来、優位性からいって、氷の魔法は火の魔法にかき消されるはずだったが、それを覆して俺の氷の魔法は本来凍ることのない炎を氷漬けにし、炎を射出した杖をも氷の中に巻き込んだ。
その魔法を放った女の子は、震えながら地面に座り込んだ。女の子はスカートみたいな服をはいていたため、真正面からだとパンツが丸見えだった。そのパンツは中心部分から染みを作り出したかと思うと、液体が地面へと溢れ出ていた。
『やりすぎてしまったか・・・こういうシチュエーションで取るべき行動は・・』
水魔法で濡らして、誰にも漏らしたことを気づかせなくさせてあげればいいはず。何かで読んだことがある。
そう思って、右手をあげて、水魔法を発動した。俺は酒のせいで、威力の加減を間違えてしまった。俺の魔法で流れ出た水は、女の子とその横で仁王立ちしていた背が低くマッチョで髭もじゃの男を洞窟の外まで押し出してしまった。
『失敗した・・・』
洞窟の外に流れる水を見てそう思った。視線を先ほど吹っ飛ばした男の方へとうつすと、男はまだ気絶していた。そして、それを抱きかかえている女性は俺の方を見て、恐れているような、顔を赤らめているような態度をとっていた。
そこで俺は思い出した。俺は全裸だった。恥ずかしかった。俺は慌てて服がある場所まで戻り、服を着た。
師匠は、正気に戻ったらしく、
「やりすぎじゃ。」
「すみません。酔ってて、力の加減を間違えました。」
師匠は人の姿に戻り、2人の方へと歩いて行った。
「ΑΣΩλ&^#Ω℀ΘΘ」
師匠はよくわからない言葉を発していた。
「師匠、その言葉は何ですか?」
俺は聞いた。
「何って、南の大陸の言葉じゃ。つまり・・・人間の使う言葉じゃな。」
『えっ??生まれた時から喋る言葉が分かっていたのに、人間の言葉はわかっていなかったのか・・・俺っていったい・・・』
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