悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました
永瀬さらさ/角川ビーンズ文庫
登場人物紹介/序章 悪役令嬢の幕開け
◆◆◆登場人物紹介◆◆◆
●アイリーン・ローレン・ドートリシュ
婚約破棄されたショックで、前世を思い出した転生悪役令嬢
●クロード・ジャンヌ・エルメイア
エルメイア皇国第一王子で魔王。アイリーンの死亡フラグの起点
●ベルゼビュート
クロードに心酔し、服従を誓う魔物
●キース
クロードの幼馴染みで、人間側の従者
●セドリック・ジャンヌ・エルメイア
乙女ゲームのヒーロー。アイリーンとの婚約を破棄する
●リリア・レインワーズ
乙女ゲームのヒロイン。セドリックの恋人
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
思えば、幼い
夢なので
『またアンタはゲームばっかりやって──』
忘れ物のありかを
やがて
だが、黄金をとかしこんだような
(……この顔……ゲームで見たような……え、ゲーム?)
まばたくと長い
「そうして
「──セドリック、様? あなた、本当にセドリック様?」
か細くなった
「らしくないと言いたいんだろう? でも俺の
ずきりとした胸の痛みが、現実感を取り
そうだ、ここは現実だ。そして、目の前の人物は、エルメイア皇国の皇太子セドリック・ジャンヌ・エルメイア。幼い頃からの知り合いで、自分の婚約者──そして、大好きだったゲームの
(……ゲーム? 攻略キャラ?)
自分の
今夜は、自分が通う学園の冬学期
さすがヒロインだと見上げる格好で観察して、はたと気づいた。
なら、自分は。
「アイリーン・ローレン・ドートリシュ。俺は君との婚約を
「──お待ち下さい、それって!」
自分の名前だ。そして、ゲームでの悪役令嬢の名前だ。
(まってまってまって! そう、セドリック様はわたくしの婚約者で……なら私は)
どこか
「俺はもう、自分に正直にリリアと生きていくことにした」
「……アイリーン様、ごめんなさい」
ごめんなさいってなんだ。
その
再度視界が
だってこれは、悪役令嬢の婚約破棄イベントだから。
「俺に愛されているという君の
ならどうして、そんな君が好きだよなんて
そのみじめな言葉は飲みこむ。それは
(……なんていうか、記憶が戻るにはタイミングがひどいと思うけれど……でも、少しだけ冷静になれたわ)
──要はいいように使われたのだ自分は、と判断できるくらいには。
「何か申し開きがあるなら聞いてやらないでもないぞ」
もしこれが何も知らないまま起こった出来事であったなら、
そう考えると、
「いいえ、セドリック様。──最初から
冷めた目で周囲を見渡すと、意味がわかったのかさっと目をそらす者がいた。だがセドリックは鼻で笑い返す。
「俺とリリアの決意表明だ」
「ここでなく
「そんなわけないだろう。君の罪は
「罪? ──つっ」
ぐいと突然横から
「乱暴にしないでくださる。レディに対してなってないのではなくて」
「何がレディだ。いい加減にしろ、アイリーン。君の所業はもう
そう言って目の前に書類の束を突き出したのは、
「……自分で立てますわ。
冷めた目でマークスを見返したアイリーンは、自力で立ち上がり、腕を取り返した。差し出された書類を、ぱらぱらとめくる。いわゆる告発状だ。いつの間に集めたのか。
リリアは身分が低いから『先に
すべて
「
ひらひらと大量の紙が舞う中で、
「マークス。教えて差し上げるわ。『
「ッ、これだけ大勢に告発されながらまだ言い張るのか! ドートリシュ公爵家令嬢であれば誤魔化せると思うな!」
「あら、なめられたものね。ドートリシュ公爵令嬢が本気で誤魔化そうとして、証拠が残るとお思い? しかもこんな
そう言って
「どうしても目を通して欲しいなら、もう一度署名つきで集めてくださる? そうしたらきちんと覚えるわ──一人一人、お名前をね。まさか匿名でなければわたくしみたいな
アイリーンの物言いに、マークスが
「それだけ口が回るのに、謝るという
「謝る? ええ、なら謝りましょうか。リリア様。
「アイリーン! リリアを
侮辱されているのはこちらだ。こんな大勢の人間の前で、皇太子本人から婚約破棄を言い
だが、顔を真っ赤にして
この夜会は自由参加だ。わざわざ申し合わせて出席したのだろう。そして教師が席をはずした
(なんて小ずるい。──いえ、でもしてやられたのはわたくしね)
これ以上ここにいても、むなしいだけだ。むなしさを吐き出し、新しい息を吸った。
「おしゃべりがすぎましたわ。ではそろそろ失礼
最後まで泣くな。いっそ笑え。してやったなどという
だから、幕を引くのは自分でなければならない。
「では、ごきげんよう皆様。セドリック様──お
セドリックが
だが
泣くまいと歯を食いしばっているからか、ずきずきとこめかみが痛む。それでもひたすら考え続けた。
ゲームの展開だと、これから自分は『顔も見たくない』というセドリックの一存で、今の学園から
他にもいくつかイベントがあったはずだ。まだ
(そうよ。ここが本当にあのゲームの世界なら、泣いてる場合じゃない)
──そうして皆が学園を卒業するだろう三ヶ月後、いわゆるエンディングの時、悪役
「
泣いてなどやらない。
考えろ。思い出せ。この
「……敵の敵は味方、って言うものね?」
くすりと赤い口紅を引いた
その微笑は悪役令嬢そのものだっただろうが、
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