第16話 どうやってパンツ脱げたの?

保健室


「ハレンチです!!」


 そう言って拡声器でも使ったかのように大きな声で叫んだのはクラス委員の山本さんである。俺が今、保健室で正座させられて今日知り合った同級生の女の子にゴミを見るような目で見下されているのには訳がある。


 先ほどまで俺は担任の渡辺先生に首を決められながらクラスの皆で教科書を取りに移動を行っていた。俺たちの目的地は第一校舎一階の出入り口であったため三階から一階に移動する訳だがその際に二階から一階に行く途中の階段で俺をホールドしたまま階段を下りていた渡辺先生が足を踏み外し一階下まで俺も一緒に転げ落ちた訳だ。


 転げ落ちている最中に俺がすかさず先生の前に移動し下敷きになったのだが衝撃で(おっぱいが顔にヒットして)鼻血を出してしまい、保健室に運ばれた。


 ここまでは、いいのだが問題はこのとき、なぜか俺は手に女性用パンツを握りしめており保健室に着くや否やパンツを握りしめた状態で鼻血を流しながら正座させられている。ちなみに保健室の先生は不在で今ここには俺と渡辺先生、山本さんに保健委員のー……あれ……名前なんだっけ? て……なんとだったよな? まあいいや。こいつ女のくせにガタイがよくて太ってっからメスゴリラてことで。


「生田、取りあえずそれを返してくれるか?」


 そう言ってスカートを押さえてモジモジとしながら顔を赤らめているのは渡辺先生であった。第一印象とは打って変わってしおらしい顔でこちらを見つめている。春香以外の女性のパンツというだけでも興奮するのにこのような態度をとられては理性を保つことが出来ん。


 取りあえず俺は落ち着くために手に持っているパンツを嗅いだ。


「スゥー、ハァー」


「ちょっ!? お前ッ、何をやってる!?」


「……」


「うわぁ……キモ……」


 俺がパンツを嗅ぐと女性陣が三者三様に反応を示す。先生は更に顔を赤らめ、山本さんは引いちゃったのかな? 目合わせてくれないや。デブ……てめぇキモイとかふざけんじゃねぇぞ豚ぁ!!


 俺はお三方の反応を見てふと我に返る。そういえば俺パンツ嗅いでるんだった。そう思うとなぜか反射的に体が動きパンツを持った手を遠ざけ怪訝そうな顔でつい口を滑らせてしまった。


「うわ、くっせぇ!!」


 俺がそう口走ったとき場の空気が凍ったような気がした。俺は恐る恐る渡辺先生を見ると先ほどまで羞恥を浮かべていた表情が崩れ引き攣っている。


 俺はこの状況で出す言葉がなく無言を貫いているとあっさりと静寂は打ち消された。


「ブハッ!! ちょっ、臭いって。あはははは」


 山本さんが盛大に笑い出した。彼女にとって相当ツボだったらしい。渡辺先生はなんかプルプル震えだしちゃったよ。


「臭いとかアンタ最低」


 そう言って俺に冷たい目で見るメスゴリラ。確かにお前の意見はもっともだが豚が俺を見るな。


 俺は今の発言が反射的なことで実際に臭いとかそういう訳ではないことを伝えるべく口を開く。


「違うんです先生! これは深い意味はなくただ俺が生理的に無理とかそういうわけで世間一般的には多分好まれる臭いかと……」


 俺が言い訳がましく口を動かしていると”プツン”と何かが切れる感覚がした。先ほどまでプルプルと引き攣っていた顔はなんとも澄んだ表情を浮かべており、まるで女神のような柔らかい表情であった。


「生田……、貴様……殺してやる!!」


 聖女のような表情が一変、鬼の形相へと変わり俺に飛びかっかって来る。一教育者とは思えない発言をして俺に飛びかかってくる渡辺先生を見ながら俺は今日死ぬんだなと悟りを開いている自分に俺は酔いしれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る