結婚前に浮気をしてもいいですか?

コハビ

第1話 朝起きたお

「起きて、夏樹、朝だよ!」


 甲高い音が早朝の部屋に響く。


「わかった今起きるお…」


 スヤー(寝ている音)。


「全然わかってない!早く起きて、急がないと入学式に遅刻しちゃうよ!」


 耳をつんざくような音とともに体が右左に揺さぶられる。


「わかったよ。起きるからうるさい声ださないでくれ」


 俺の体を揺さぶる手を掴みながら気だるい体を起こす。


「あっ、ちょっ…あた…もう急に起きないでよ」


 俺が急に起き上がったことで彼女の額と俺の額がぶつかってしまった。


「あたたた、悪い。でもお前だってこんな乱暴に起こさなくったっていいだろ」


 俺が謝罪と反論を唱えると頬をプクゥと膨らませた。


「なによ。何度も起こしてるのに起きないからこうなるのに、他に効果的な起こし方あるの?」


 彼女はどうせ優しく起こしても起きないんでしょ、と言わんばかりに俺を起こす方法を問うてきた。(わざわざ起こしに来なければセットしている目覚ましで起きるんだけどなあ)などと起こしに来てくれた彼女に失礼なことを考えながら俺がどう起こされたらすぐ起きるかを述べた。


「耳元の近くで小声で『お兄ちゃん朝だよ、起きて。』と言って耳を唇でハムハムしてくれ。そうしてくれたらベットから飛び起きてお前を抱きしめながらベットに潜り込む」


 俺は徐々にテンションが上がり最後には満面の笑みで答えると彼女は、


「はいはい、わかったから準備して、私は下で待ってるから」


 と猿をあしらう飼育員のようにそっぽ向いて部屋から出て行った。


「へいへい、準備しますよーとっ」


 俺は彼女に言われたとおり学校へ行く準備をすべく寝巻きを脱ぎ制服に袖を通す。


(今日から俺も高校生か…)


 何かと感慨深いものがある。小学生や中学生のときは高校生はすごく大人に見えたし、漫画やドラマなどの高校が舞台のものを多く見てきたので自分がその舞台に立ったのだと思うと自然と胸が高鳴る。


「さぁてと、顔洗って歯磨いて寝癖直しますかな」


 そんなことを呟いて部屋を出た。


「―――ジリジリジリジリ、お兄ちゃん朝だよ、起きて…チュパパパパ、じゅるるるる、ズババババ、ズボボボボ…」


 小鳥のさえずりが聞こえる穏やかな朝に壮絶な音を出す目覚ましを止めに俺は自室へ舞い戻った。


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