短編

シキ

夕焼け色

「私ね、夕焼けのオレンジ色が好きなんだ」

夕暮れ、隣に歩く君が言う。

「前は青系の色好きって言ってなかったか?」

「そうだね、青系の色も好きだけど今は夕焼け色が一番好きなんだよ」

「どんな心境の変化があったんだか」

「ふふ、それはね、貴方の色だからだよ。温かくて優しい、夕焼けみたいな貴方の色だから好きになったの」

照れくさくなり僕は顔を隠そうとするけど出来ない。

「恥ずかしいと顔を隠そうとする貴方のくせも好きだよ」

隣に歩く君と手を繋いでいるから顔を隠せない。

ピロン♪

「あ、メールだ」

君が手を離し、メールを確認する。

「今日は鍋だよってさ」

嬉しそうに言って、手を繋ぐ。

「鍋好きだもんな」

「そうだね、美味しいし。そろそろ新しいメモリーカード買わないとかなー」

「なんでそんなに重くなってんだよ」

「もちろん貴方から送られてきたメールだよ。保存してる件数すごいことになっちゃってるんだー」

「消せばいいだろメールなんか」

「貴方が私にくれた大切な言葉だもん。消したくないんだよ」

僕の言葉に頬を膨らませ言ってくる。

君の家が近くなる。

「手、離さないと恥ずかしいしょ?」

君が言う。

「恥ずかしいけど、繋いでたいんだ」

君が手を強く握る。

「あーあ、着いちゃった。じゃあ、また明日会えるまで、さようなら」

「さようなら。また明日も会えるといいね」

僕も君も笑顔で手を振る。

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