第4話 ちっぱいエルフ売れっ子気分

 再び、スマートフォンが、皆の間で回った。


「ウフフ」

「フフフ」


「えへ。ウケてくれましたか。オモシローイが褒め言葉です」

 黒髪をくるくるして、恥じらった。

「文化的交流も気を付けてください」

 イヌコの突っ込みは遅かった。


「オモシローイ」

「オモシローイ」


「ややややや。そんな、正直に。エルフさん、皆好きだな」

 顔の前で手を振り、照れまくりのタヌキちゃん。

「おもしろーいって、覚えたてのほっかほかではないか。大丈夫か」


「イヌコ・ネココ・フウフノ・サッカ」


「夫婦、違うぞ」

 イヌコ大否定。

 やんやん言っているネココ。


「ナカヨシ・フウフ」

「オモシローイ・オモシローイ」


「面白いが面白いな。笑われているようだ」

 すかさずイヌコがニヒリとした。

「何よ。沢山褒めてくれているのよ」


「そうか、これが、ネココ先輩のスランプを救った官能小説か……」

「違うもん。ライトノベルだもん」

 ぷうっとする。


「情景描写とかないのですか。冒頭簡略ですけれども」

「読みやすさよ。誰もがイカツイ論文を読みたがっていないのよ」

「純文学は、論文ではないけれども」

「もしかして、ライトノベル初……?」


「エコタワシ・オモシローイ」

「タワワ・チッパイ・オモシローイ」


 やんややんや……。


「作中でネココ先輩は、ライトノベルの売れっ子とある。エルフさんの様子から、それは実力としよう」

 羨望がイヌコに生まれた。

「あら、嬉しい」

 目をくりっとして、手をぱちっと合わせた。


「果たしてこのエコたわしとは、どんなのものか? 重要アイテムだ」

「し、知らなくていいわ」


「エコタワシ・シッテル」

「ムーブ・ジテン・ノッテル」


 ぶうーん……。


 お姉さん風エルフが風を起こし、小説のシーンを映像化してくれた。

 丁度、イヌコがネココにエコたわしを差し出した所も。


「ちっぱいに用はない。でも、ネココ先輩は、ちっぱい……」


 ダン!


「俺は、たわわが好きなんだ……!」

 普段、沈着冷静なイヌコが草むらを叩いた。


 ――ぐらり……。


 空間が急に歪んで、大きな地震に襲われたと思った。

 草地に座っていても動いてじっとできず、二人は叫んだ。

「木に捕まれ!」

「木に捕まって!」


「うおおおおおおおお。ネココ先輩、俺は……。俺は、好きでした……! 死にたくねー」

「きゃあー! 助けて……」


 ――スランプ・トンネルヘ・スクリュー……。


 キリキリする声と共に、冷たいよく見かけた床に投げ出された。


「……」

「……」


「ん? 文芸部の部室じゃないか。よかったな、ともかく」

「やっ……。折角、売れっ子作家になったのにー」

 ぷううと頬を膨らませてリスのようである。


「そうだ。今、スランプトンネルの後、何か叫んでいなかった?」

 胸に手をやり、トクントクンと、ときめいていた。

「何でもない。死にたくねーなんて、恥ずかしい」


「違うの……」

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