あとがき

 性癖というものは厄介なものだ。それがどんなものであれ、一生付き合って行かねばならない。

 時代や社会から「一般的」と見なされれば、「ノーマル」と呼ばれる。私が察するに、苦労が絶えないはずだ。どんな性癖であれ、苦労するくらいは分かる。


 しかし、私は残念ながら、一般的な「ノーマル」を全く理解出来ない。理解出来たら、きっと引き出しが広がって楽しかったかもしれないが、どう頑張ってもダメだった。

 こういうマイノリティたちのことを、世間ではこう呼ぶ。「変態」と。


 一言で変態といっても様々だ。私はその中でSM……サディスト(以下S)・マゾフィスト(以下M)のMという性癖を持っている。

 それぞれの意味は、簡単に言えば誰かを加虐する事で性的な興奮を得るか、被虐される事で性的興奮を得るか……である。無駄に偉そうで粗暴な態度を取るからS、何でも言うことを聞いて、卑屈で大人しいからMではない。そういう手合いはここで除外する。


 この性癖の難点は、コンセントのオスとメスと同じで、一人ではどうにもならない事である。SMと呼ばれる所以だ。故に漂うことになる。故に金になるのである。クラブはもちろん、サロンもあれば、イベントなども派手に開催されている。性欲を満たしたければ、自ら動くかしかないのだ。例え、それが一時のお遊びでも。


 これは聞いた話しではあるが、SMショーは通常のエロショーより価格設定を高くしてあるのに、お客さんの入りがいいらしい。アングラな世界に興味を持つのは人間の性か……。

 まあ、ショーアップされた「SM」は「魅せる」事が前提。くれぐれも妙な勘違いをなさらぬよう……。というより、SMって魅せるものなのか?(苦笑)


 Mばかり集まってしまうとどうなるか、結構面白い現象が起こる。

 コンセントの口は同じなのに、M同士で遊び始めてしまうのだ。自分で気持ちが分かってしまうので、かなりえげつない事をやる。変なサディストなど裸足で逃げ出すだろう。 ……私はマイ鞭を持っている。大体必要な道具は揃っている。私は一体どこに向かっているのか分からない。性癖迷子だ。

 そうそう、ある女の子に衝撃的な事を言われた事がある。「ずっとSだと思っていました」。返す言葉もなかった。


 さて、ここまで好き勝手書いたが、性癖の問題は人生の問題。馬鹿には出来ないのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る