裏切り
「蒼ヰ司令、アクアプリズンの実験体が汚染レベル16Fを超えました…。理論値超過のため現在の汚染レベルは不明です。ご決断を…」
両目に眼帯を巻いた男は、額を指でトントンと叩きながら相槌を打った。
「もう…10年か。東京湾蒸発。止まない豪雨。腐っていく街。今の東京はどんな色をしてるのかね?」
「も…森に包まれています」
「綺麗かね?」
「はい…とても。司令の目の前には絶景が広がっています」
額を叩いていた指を机に走らせ、椅子を立つ。
「また洗浄してどうなる。私はね、あの悲劇を決断した国連が嫌いでね。人類のほとんどが死滅してXMが濃くなっただけじゃないか」
「しかし…このままでは…」
杖を床に強く突き呟く。
「ナジーア…。奴らを怖れてるだけだろう。青と緑の陣取りゲーム。それに終焉をもたらす存在。遊びはもう終わりにしたらどうかね」
「…というと…?」
モニターに杖を指し答える。
「そこの湖を歩いてるエイダ。あの子供の遺伝子ストレージにADAのクローンが埋め込んであるんだよ」
湖を歩く少女が映し出されたモニターの横に、倒れた男性が映し出される。
「我々RESISTANCEを裏切った父親は子供の反抗を止められなかったようだがね」
動揺を隠しきれない側近の男が声を荒げる。
「蒼ヰ司令! ADAは物理的に全て破壊されたはずです! もし、今話されたことが事実であれば…地球は…人類は…機械に…!」
「あの少女が覚醒した以上、ADAクローンは彼女と融合して目覚めるだろう。シンギュラリティなんて幻想だよ…。エイダに人類を委ねるのもまた…」
パーンッ…。
乾いた銃声が部屋に響く。
「蒼ヰ司令…。"ADA危機" を阻止するのが我々の役割です。悪く思わないでください」
机に倒れ掛かった蒼ヰから流れる血液は白い床を赤く染めた。
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