第36話 ベスポジ

 俺には秘密の場所がある。


 そこは暗くて、低い。見つかりにくい俺のお気に入りの場所だ。

 そこには俺しか入れない。俺の家は、ほとんどがねぇちゃんとにいちゃんの場所だけど、ここはさすがのねぇちゃんも、にいちゃんも入れないんだ。



 例えばおもちゃ。

 くわえてそこに入って、こっそり遊ぶんだ。お気に入りを集めたりしてな。


 例えば遊び。

 俺はそこで"ほふくぜんしん"して遊んでる。おもちゃに飽きたら秘密の場所をたんけんするんだ。

 ねぇちゃんが座らないから、秘密の場所のかーぺっとは実はふかふかなんだぞ。俺しか知らない秘密だぞ。



 よし、じゃあちょっと入ってみるな。


 ふふ、見えないだろう。ここにいるとねぇちゃん達は寝っ転がらないと俺がどこにいるのかもわからないんだ。

 たまにあおむけになってふかふかをたんのうしたりするんだ。

 あおむけになると、天井に足がつくだろ? 足をバタバタさせて行ったり来たりするのさ。



「シロー? どこ行った?」


 ねぇちゃんが呼んでる。でもどこにいるかはわからないんだぞ。すごいだろ。俺からはねぇちゃんの足が見えるから、ねぇちゃんがどこにいるかはわかるんだ。


 ここが俺の、ベスポジだ!!

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