第32話 あなたに


 まだ桜が蕾の頃、あなたはやってきました。


耳だけ茶色い、白いもふもふ。



 初めてあなたに会った時、クレートを覗きながら話しかける私達の声に、あなたは右に左に首を傾げていましたね。

 その様子がなんとも愛らしく、私達は "カワイイ" "カワイイ" と何度も何度も言い合いました。


 移動中、あなたはクレートの中で寝ていましたね。具合が悪くなったのかと心配しましたが、取り越し苦労でした。

 はじめての場所にも怖がることなく堂々とした寝姿、頼もしかったですよ。


 あれから数ヶ月。


 元気にすくすくと成長していく姿を間近に見ることができて、私達はとても嬉しいです。



 もし言葉が通じたら、あなたと何を話しましょう。



 あなたが夏場に寝ていた場所はトイレですよ。


 ごはんは選り好みせず、残さず食べてください。大きくなれませんよ?


 外で会うお友達に勢いよくあいさつに行きますが、たまにお友達がびっくりしてしまいますから、落ち着いて。


 ……話せばキリがなさそうです。

だから、今日はひとつだけ。



 お誕生日おめでとう。



 ねぇちゃんとにぃちゃんはあなたに会えて幸せです。

 これからも、よろしく。






 ※ 次回より、今まで出ていなかった "にぃちゃん" が登場します!

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