転生を断ったら、日替わりでチートスキルが届くようになった

おもちさん

第1話  平凡に生きたい

 オレは今、真っ白な部屋にいる。

 いや、部屋かどうかはわからないか。右向いても左向いても全部真っ白だ。だだっ広い空間なのかもしれない。


 そんな場所に腕組みをした女性が一人、ぽつんと立っていた。見るからにキゲンの悪そうなその人は、オレの顔を見るなりため息をついた。

 なんだか感じ悪いな……。そう思っていると、相手が口を開いた。


「まさか、あんなアッサリ殺されるなんてね。ちゃんとチート能力まで与えてやったのに」

「は? いきなりなんの話?」

「そっか、覚えてないんだね。じゃあ教えてあげる。あんたは別の世界からやってきた『転生者』だよ」

「別の世界?」

「そう。その世界で死んだアンタを一度チート能力付きで転生させたんだけど、今度はこっちの世界でも死んだって訳」

「つまりオレは2回死んだって事?……全く記憶にないな」


 本当に何も思い出せない。どこから来たのか、家族は居たのか、好きな食べ物は、自分の名前でさえも。

 まるで自分の中身がカラッポにでもなったような気分だ。


「まぁ、記憶についてはなんとかなるでしょ。じゃあ転生のオカワリいこうか。女神たる私が、今度はもっとスゴイ能力をあげるからさ!」

「いや、いらんし。転生もしたくない」

「そうでしょそうでしょ! 今回のは全属性のブーストが……は?」

「ん?」

「え、今いらないって言った?」

「言った。いらん。めんどくさい」


 オレがそう言い切ると、女神は顔を真っ赤にして震えだした。そもそもコイツは本当に女神なんだろうか? 

 なんだか神様っぽさに欠けてるような気がする。


「アンタねぇ、前回失敗したからって私の力なめてんでしょ?!」

「いや、そうじゃねえが。何もしたくないだけ」

「あぁもう! 10代のクセにジジイみたいな事言ってんじゃないわよ!」

「ふーん、オレって10代なのか。いくつ?」

「18! ってそこじゃない!」


 歳聞いたらキレられた。なんだよコイツ、沸点低すぎ。自分の年齢を聞いちゃうオレもアレだと思うが。


「ともかく、アンタの転生はもう決まった事なの。ブツクサ言わずに復活しなさい」

「マジかよ。そうやって何度も生き返らせるってマズくないの?」

「細かい事はいいの! 面倒くせえガキが」

「あーもう、クッソだりぃ。死んだままでいいじゃんよー」

「うっさい。あと近いうちに、もっとすんごいチート能力持っていくから。そんときは私に感謝しなさいよ!」

「えー、いいよそんなん。平凡に生きさせてくれよ」

「クソが……、絶対お礼を言わせてやるからな!」


 その言葉を最後に視界が急にまぶしくなった。転生とやらが始まったのかもしれない。こんな何も覚えてない状態で生き返ってどうすればいいんだ?

 心がカラッポのオレは、生きる気力まで無くなっていた。

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